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骨も牙も抜かれた獣:side赤石(1)
弘毅からのメッセに驚いた。
腰が痛み身体も上手く動かないというのに、俺のために晩ご飯を用意してくれるという。
まさかあんな身体で買い物に出たのでは!?
すぐさま場所を移動して電話を掛ける。
…そうか宅配か…今時の子は便利なツールを駆使するんだよな。
それにしても、昼に見た時も夕べの余韻か、目元も潤んだままで色っぽかった弘毅。
まさか、そんな状態で荷物の受け取りをしたんじゃないだろうな!?
あんな姿、俺以外見てはならないっ!
何かあったらどうするんだ!?
ちょっと念押ししておかなければ。
もう一度電話をかけようとした時、岡田女史の声が聞こえた。
「部長ーーーっ!どこですかぁーーっ?
お電話でーーすっ!!」
チッ。こんな時に一体誰だ!?
タップし掛けた指を止めて
「ここだ!どうした?」
「すみません、飯島専務からです!
急用とかで…」
「分かった。こちらから掛け直すとお伝えしてくれ。すぐ戻る。」
「はいっ!ではそのように…」
パタパタと走って行く岡田女史を見送りながら、面倒臭い案件が降り掛かりそうな予感にため息をついた。
――案の定、それから専務に振り回された俺は、弘毅に電話はおろかメッセを送ることすらできずに、イライラを募らせていた。
いつも冷静な俺が珍しくピリピリしている様に、皆んなが近寄ることもできず、遠巻きに様子を窺っているのが空気で分かる。
見かねたらしい寺橋が、そっとコーヒーを差し出してきた。
「部長、根を詰めると身体に触りますよ。
一服されませんか?
私のコーヒーは中々美味いらしいですよ。」
くすくすっと笑いながら差し出されたコーヒーの香りに、ふっと肩の力が抜けた。
「寺橋、ありがとう。いただくよ。」
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