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骨も牙も抜かれた獣:side赤石(3)
「…何だそれ?アホか…心配して損した。」
寺橋は椅子の背もたれに身体を預けると、上を向いて脱力した。
そして、こう言い放った。
「色ボケ。」
「何とでも言ってくれ。
今の俺は何を言われても許す。
もう、弘毅のことで頭が一杯なんだ。
こうしている間にでも、早く帰ってアイツの顔が見たい。抱きしめたい。」
「はぁ…臆面もなくよくそんな砂を吐くようなセリフがポンポン出てくるもんだな…感心する。」
「…自分でも感心するし戸惑っている。
俺って、こんなんだったっけ?って。
…初めてなんだよ。
愛おしい、大切にしたい、コイツと幸せになりたい、なんて思うのは…」
「本気の恋、ってことか…」
「あぁ。マジモンだ。」
「そうか…まぁ、良かったな。
…でも、お前ん家はいいとしても、若林ん家ってどうなんだ?
そういうの受け入れてくれるんだろうか?」
「それは分からない。
何せ昨日の今日だからな。
お互いのことも何一つ理解してないから。
これから時間をかけてゆっくりと話し合って育んでいくよ。
とにかく俺はもう、弘毅を手放す気は更々ないから。
…会社では取り繕えても、素になるとボロが出てくる…デキる男で通ってる俺は、幻滅されるのが怖い…」
「らしくないなぁ…いつもの自信満々な赤石部長は何処に行ったんだ?
カッコいいところもダメなところも、みんな引っくるめて愛し合って一緒になるんだろ?
完璧な人間なんていないじゃないか。
たかが人間、そんな偉いモンじゃないよ。
あんな20才 過ぎのヒヨッコに、骨抜きにされて牙をもがれて…何か今のお前、甘噛みしかできない子猫ちゃんみたいだぞ。ははっ。」
「…ふん、どうせ……あぁ…子猫になって甘えたいよ…」
「うへぇ、キモっ!」
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