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骨も牙も抜かれた獣:side赤石(4)
寺橋に散々罵倒され揶揄われたがその後も、恋に浮かれた俺が抱えていた悩みを聞いてもらった上に、弘毅に関しての新情報が手に入ったお陰で幾分気分が楽になった。
「彼は幼稚園の頃から空手を習っていて黒帯の有段者なんだって。だから手を出そうとしたって、そんじょそこらの男なんか敵わないよ。
下手したら赤石、君も太刀打ちできないかも。」
そうか…あの意外とがっしりとして、しなやかな筋肉はそのせいか…
昨夜抱いた肌の感触が蘇る。
「……し、赤石っ!!」
ハッ…ん?
すっと差し出されたティッシュに首を傾げると、寺橋は口を指差しながら呆れ顔で言った。
「よ・だ・れ」
「うっ…すまん…」
「あーぁあー、嫌だなぁ…色ボケした上司の尻拭い、いや口拭いなんて…うえっ。
あー、恥ずかしい…『オトナノオトコ』の赤石部長も、若林が絡むと形無しだな。
まぁ、できるだけフォローするから仲良くやってよ。」
「ありがとう…恩に着るよ…お前に何かあった時には絶対に協力するから。」
「そう?じゃあその時はよろしくね。」
「あぁ…勿論だ。任せておけ。」
…同志としてお前には幸せになってもらいたい。
だから、本当に愛する人と結ばれたことを嬉しく思っている。
「…そろそろ戻らないと。
岡田女史が気にしていたぞ。
明日にでもおやつにスイーツでも買ってきた方がいいかもな。」
「アドバイスありがとう。
明日行ってくるよ。何がいいかな。」
「そうだな…最近の話題は『春限定パティシエ自慢の桜のケーキ』だぞ。
デパ地下に売ってるらしい。
限定商品だから、並ぶの覚悟しておけよ。」
「うっ…仕方ない…寺橋、ありがとう。
悪いけど明日、中抜けするからよろしく。」
肩を震わせて笑いを堪える寺橋を伴って、会議室を後にした。
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