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骨も牙も抜かれた獣:side赤石(7)
お腹を捩って笑う弘毅につられて、俺も一緒になって大笑いした。
こんな馬鹿笑いするなんて…一体いつ振りなんだろう。
こんなことでも、心がほわっと温かくなる。
俺は、笑い過ぎて目尻を擦る弘毅の隣に場所を移すと、そっと抱きしめた。
「弘毅…」
「はい。」
「絶対に幸せにするから…俺の側で、ずっとずっとこうやって笑ってて…」
くすくすっ
「はい!」
弘毅が遠慮がちに回してくる腕を掴んで、しっかりと背中に巻き付かせた。
体温が…同じ温度になる。
おでこをくっつけ合って、唇を柔らかく重ねた。
今度は軽く啄むように。
ぐう〜〜〜っ
甘い時間を切り裂くように、俺のお腹が派手に鳴った。
…ぷぷっ…あははっ…
「達也さん…ご飯にしますか?お風呂にしますか?」
「先にご飯にするよ。着替えてくる。」
「はい!じゃあ、ご飯の準備しますね。」
まるで新婚さんの会話のようだと、ニヤニヤが止まらない。
弘毅を見ると、自分で言って照れているのが手に取るように分かる。
耳まで真っ赤だ。
俺は、むふむふと妄想を繰り広げながら手を洗い着替えを済ませると、弘毅の待つダイニングへ急いだ。
「あぁ…美味そうだ…これ、全部コンビニの?」
「そうです。インスタントと出来合いの物なんですけど…ごめんなさい、どうぞ。」
「ありがとう。いただきます。」
弘毅が見つめる中、味噌汁に口を付けた。
「…あの…それはインスタントそのままです!」
うんうん、と頷く。
次に稲荷揚げを摘んで口の中へ。
ん?ご飯じゃない!?これは…ポテトサラダだ!
美味い!
俺の目が大きく見開かれるのを弘毅が嬉しそうに眺めている。
「弘毅、これ美味いぞ!ほら、お前も食べろ。
あーーーん。」
差し出された箸に弘毅はドギマギしていたが、観念したのか大きく口を開けた。
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