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骨も牙も抜かれた獣:side赤石(10)

「よし、分かった。でもそれだけで足りるのか?」 「はい。俺も元々朝はあまり食べないので…」 「そうか…弘毅。」 「はい。」 「もっと甘えてくれ。ただ…俺は今まで“ちゃんとした”恋愛をしたことがないから、素っ気なかったり、お前が望むような反応がないかもしれない。 それでも、俺はお前と一から恋愛を楽しんで進んでいきたい。 だから、遠慮せずに何でも言って欲しい。 俺も…遠慮はしないぞ。」 「達也さん…」 弘毅が俺の胸に飛び込んできて、俺の首に手を回して自分の方に引き寄せると、キスしてきた! ちゅっ それは一瞬のことで、眼下には真っ赤な顔で俯く弘毅がいた。 「弘毅…」 「…俺、もう達也さんのことで頭が一杯なんです。 こんなんで、業務に差し支えたらどうしよう…ドキドキして仕事なんて手に付かないよ…」 そして弘毅は、顔を上げて真剣な顔になると 「会社でプライベートな面が出たら、ちゃんと注意して下さい下さいっ! でも…2人の時は…甘えさせて下さい…」 「弘毅…」 思い掛けない弘毅の行動にドキドキする。 かわいいっ!萌えるっ! 真面目で健気な恋人をしっかりと抱きしめて、今度は俺からキスを仕掛ける。 俺は大人だから、フレンチじゃなくて濃厚なヤツを。 「んっ…んふ…んふっ」 色を帯びてくる弘毅の甘い喘ぎ声に、ついついその気になりそうだったが、精一杯腕を突っぱねて拒絶の意を示すかわいい恋人に気付いて、そっと唇を離した。 「…はっ、はぁっ…達也さん…ゴメンナサイ、今日は…」 「うん、分かってる。ごめんな。」 これ以上仕掛けると嫌われるかも…余裕ぶった顔をして、軽いキスをひとつだけ送った。 少しの外出なのに後ろ髪を引かれるような思いでコンビニに走り、弘毅用のパンをゲットしてきた。 そして順番に風呂に入ると、宣言通り弘毅を抱きしめて妄想を繰り広げながら、ゆっくりと瞼を閉じたのだった。

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