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骨も牙も抜いた子猫:side弘毅(3)

「あの…達也さん…」 ちろりと上目遣いで俺を見上げる達也さんの目をしっかりと見つめて言った。 「俺、学生の頃からずっと何年も電車を利用してます。 危ない目になんてあったことはありません! もしあったとしても大丈夫です。 だから…心配しないで信用して欲しいです。」 「だけど、ここから行くなら」 「ケジメ、付けましょう! 公私混同したら、いつかそれが表に出ちゃいます。 お気持ちは本当に嬉しいんです。 俺だって思いが通じ合った今、少しの時間でも一緒にいたいから…でも、ダメなんです、甘えたら! お願い…分かって欲しいです…」 俺の迫力に押されたのか、達也さんは大きくため息をつくと 「…そんなところ、弘毅らしいな。 ……分かった。その代わり…週末はずっと俺と過ごしてくれるか?」 「はい!こちらこそ…お願いします!」 それでもまだ達也さんはブツブツとボヤいていたが、電車の時間が迫っていた俺は、軽くスルーし片付けを済ませた。 「達也さん、行ってきます!あ…忘れ物…」 とっとっ…と、まだ不貞腐れ気味の達也さんに歩み寄ると、唇を目掛け目を瞑ってキスをした。 「行ってきます。」 自分で仕掛けておきながら、ぶわっと体温が上がり、全身が火を吹きそうに熱くなった。 恥ずかしくて達也さんの顔も見ずに玄関を飛び出した。 …その後、達也さんが身悶えしてが付かなくなってトイレに駆け込み、遅刻しそうになったことなんて…知らなかった。 いつもと違う駅への道を急ぎながら感慨にふけっていた。 あー…俺、恋人ができたんだ…それも超イケメンのカッコいい大人の恋人が… これからの俺の人生、もういいことが起こらないんじゃないだろうか…後で無料の占いでも検索してみようか… そんなことを考えながらまだ少し痛む腰を摩りつつ、人混みに紛れていった。

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