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愛される小猫(3)

目尻にじわりと涙が溜まりそうになったその時、脳天気な声が降ってきた。 「おやぁ?寺橋係長、新人君の説教ですか? ダメですよ、貴重なリラックスタイムの昼休みにいじめちゃ…」 ふっと顔を上げると、見たことのないこれまた美麗な男性が腰に手を当て微笑みながら立っていた。 …この会社、やっぱり顔で選んでるのか? 一体何人のイケメンがいるんだろう…顔面偏差値高過ぎ! 不躾にじっと見つめてしまっていた。 係長は顎に指を添え小首を傾げながら(うわぁ、あざといポーズ!)その人に返した。 「白瀬課長…いじめてなんかないです。 人聞き悪いこと言わないで下さいよぉ。」 「いやいや、泣かせちゃダメだって。 見ろよ…『子猫ちゃん』泣いてるじゃん! えーっと、君は確か人事に配属された…」 ん?聞き間違い?『子猫ちゃん』って言った!? 「若林弘毅です。 よろしくお願いお願いしますっ」 ざっ、と席を立ってお辞儀をした。 「あ、そんな畏まらなくていいから、座って! 俺は第一営業部の白瀬。 日中はほぼ外に出てるから、書類持ってきてもらっても会ったことないよね?」 「はいっ。」 「まぁ、コイツは口は悪いけど人情派のいい奴だから、何でも相談するといいよ。 じゃあ、またよろしくねー!」 ひらひらと手を振ると、保冷バッグを抱えて行ってしまった。 「…ったく人を蹴落としたり持ち上げたり…」 ぶつぶつ文句を言っていた係長は、本題に戻すぞ、とばかりに真顔になった。 「同性で付き合うってことは、そういうリスクもあるってことを分かって欲しかったんだ。 そういう覚悟がないと、いざ何か事が起こった時に見失うものがあると困るから。 まあ、アイツはそんなことも全て引っくるめて、君を選んで愛してるんだろうけどね。」

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