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愛される小猫(4)

俺は係長の顔を見つめるばかりで…係長は続けて言った。 「…俺が口出しすることではないんだけどさ、それだけアイツが本気だってこと、分かって欲しいんだ。 自分の地位も財産も何もかも全部投げ打ってでも愛したい、守り抜きたい…それが君なんだよ、若林君。 俺達は同士というのか戦友とでもいうのか…そんな関係なんだけど、俺が辛い時にさり気なく助けてくれたのはアイツなんだ。 だからこそ、本気の恋を応援したい、助けたい…そう思ってる。 …君にはキツいこと言っちゃったけど、ごめんね。でも、それが現実なんだよ。 ただでさえ結婚でも一悶着あるのに、同性でなんて…ね、分かるよね。」 俺はただ頷くことしかできなかった。 係長の思いが痛い程に伝わってくる。 朧げな恋が成就して舞い上がっていた。 今後のことや家族のこと、何にも考えてなかった。 恋に恋する生半可なふわふわとした気持ちでいてはいけない。俺も…真剣に命を賭けるくらいの思いで向き合わなければ。 「係長…ありがとうございます。 うちの家族から認めてもらえるように、俺頑張りますっ!」 「うん。頑張ったらしんどいから頑張らなくてもらいい。 君が君らしくいれば、それでいいと思う。 無理に変えたり変わろうとしなくていいよ。 あのさ、意外だけど彼、本気で真剣な恋って初めてだから。 今まではね、単なるアソビ。 だから初恋だと思っていいよ。 その分してくると思うけど、多目に見てやってね。」 係長はチラリと時計を見ると 「休憩終了。余計なこと言ってごめん。さ、行こうか。」 促されて席を立った俺は、強くならなきゃ、なんて決意しちゃってた。

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