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愛される子猫(16)
甘々な時間を過ごした後、昼過ぎに朝昼兼用ランチついでに買い物に出掛けることにした。
学生時代から通う、達也さんの馴染みの喫茶店に連れて行ってもらい、土日はやっていないランチを無理矢理作ってもらった上に、俺のことを「恋人だ」と堂々と紹介するもんだから焦った。
年配のマスターが「やっと見つけたのか、おめでとう!」と、とても喜んでくれたのには吃驚した。
マスターからこっそり聞くところによると、達也さんは恋愛ごとに巻き込まれて何か大きなトラブルがあり、一生独身を通すつもりだったらしい。
だから、そんな彼が『恋人』を伴って来たことが本当に嬉しいんだ、と涙ぐんでいた。
ちょっぴり胸がちくりと痛んだ。
トラブルって何だろう。相手は?
いつか俺にも話してくれるんだろうか。
そんな俺の小さな痛みにも気付かない達也さんは、終始ご機嫌でマスターと軽口を叩きながら食事を楽しんでいた。
ご飯は確かに美味しかった。
マスターは、達也さんの好物も教えてくれた。
また一緒に来るようにと、笑顔で店を送り出されたが、俺の知らない達也さんの過去を垣間見て、少しだけ落ち込んでいた。
そりゃあ大人の男性だから、恋愛のひとつやふたつくらいあって当たり前だ。
でも、でも…あの甘く蕩けそうな優しい顔を俺以外の誰かに向けられていたのか、と思ったら…何だか悲しくなった。
そんな気持ちを抱えたまま、鍋すらもない達也さんの家では料理ができないため、最低限必要な台所用品を買い込み、近くのスーパーで食材も買ってきた。
「凄い荷物になっちゃいましたね。」
「これくらい、どうってことないよ。
これで弘毅が俺の家で料理をしてくれると思ったら、そっちの方が嬉しくてワクワクしてる。」
「じゃあ、早速腕を振るわせていただきます!」
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