いつの間にか、週末は必ず達也さんの家で過ごすのが当たり前になっていた。 残業がない日の平日は、最初のうちは外食して名残惜しげに別れていたのが、俺から申し出て達也さんの家で食事を用意して一緒に食べてから帰ったり、そのままお泊まりコースに突入(こちらの方が多かった…)するようになり… 気付いたら俺の荷物が次第に達也さん家に増えていき、同棲…というのか同居というのか…今では一緒に暮らしている。 達也さんは 「アパートはもう解約して引き払っておいで。」 と再三再四言ってくれているのだが、丁重にお断りしてそのままにしている。 時々郵便物を取りに行ったり、不要な物を置いているだけで物置状態の部屋。確かに家賃が勿体ない。でも家賃補助は支給されているから、俺的にそれ程の負担にはなっていない。(会社には申し訳ないが目を瞑ってもらっている。寺橋係長も全面承諾済みだ。) 来月なのか来年なのか、一体いつになるのか分からないけれど…全てのことがクリアになるまで、そうしなければならないような気がして。 頑固だとか融通が利かないとか、達也さんはぶつぶつ言うけれど、俺だって譲れないものは譲れない。 そんなある日のこと、長兄からラインがあった。 『弘毅、元気にやってるか？ 来週木金と出張で東京に行くから、お前の顔見に行くよ。 ちっとも帰ってこないから、親父もお袋も心配してるぞ。 ホテルは予約してあるから泊まる所は気にするな。 じゃあな、また連絡する。』 えっ、大兄(おおにい)ちゃん来るのか？ マジか…部屋、解約してなくてよかった… 俺には兄が2人いる。 俺より6つ年上の勝義(かつよし)。通称“大兄ちゃん”。 それと、２つ年上の茂明(しげあき)。通称“小(ちい)兄ちゃん”。