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難敵来襲(4)
妄想と期待でわくわくしながら、出張の日を迎えた。
正直言って仕事なんてそっちのけ。
早く弘毅に会いたい!
朝イチの新幹線に乗り込み、今日のスケジュールをチェックする。
本当は2日かかるところを今日一日にぶっ込んだ。
全て段取りしてアポも取って完璧な状態に仕上げてきた。
俺ならできる。
相手先には迷惑な話なんだが、そんなことには構ってはいられない。
金土日と弘毅と一緒だ。
あ…弘毅は明日仕事か…じゃあ、あいつのアパートで待ってりゃいいか。
何か美味いもんでも作ってやろうか。
自炊は慣れてるからな。
はっ…よくよく考えたら、俺の過保護も溺愛っぷりも元のままじゃないか!
あー…俺も親父やお袋と同じなのか…
でも、まぁ、いいか。弘毅に会えるんだから。
『兄ちゃんは新幹線なう♡』
と少し前の流行り言葉でメッセを送った。
ハートも添えてやった。
あれ?…未読のまま…おい、通知音消してんのか?ちゃんと見てくれよ!
うずうずしながら待っていると、暫くして
『気を付けて』
愛想もないメッセージが届いた。
弘毅…兄ちゃん、泣いちゃうぞ。
久し振りなんだぞ?分かってんのか?
わざわざお前に会いに行くんだぜ?
ため息をついたところへスタンプが届いた。
パンダが踊っている!
緩む口元を押さえながら、踊るパンダを何度も見つめていた。
久し振りの東京駅。
慣れた風を装い、人の流れに沿って足を運ぶ。
数年間染み付いていた感覚はすぐに戻ってきて、俺は都会で働くサラリーマンに同化していた。
電車を待つ間に弘毅にメッセを送る。
『東京駅に着いたぞ!
仕事が終わる頃にまた連絡するよ。』
――沈黙する携帯。
弘毅、お前の携帯は機能しているのか?
ウザ過ぎてブロックされてるとか…そんな馬鹿な…
すると
『了解』
え?それだけ?
弘毅…兄ちゃん、マジ泣きするわ…
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