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難敵来襲(7)

気持ちが急いて、ものの5分で東口に着いてしまった。 あと10分。10分すれば弘毅に会える。 1本早い電車に乗ってればもう来る頃か。 帰宅ラッシュで人波が吸い込まれて行ったり吐き出されたり。 見逃すまいと、必死で弘毅の姿を探していた。 背は伸びたのか? 相変わらず華奢なんだろうか。 “ふにゃ”という言葉がぴったりの笑顔は健在なんだろうか。 俺も早く本社勤務になりたいよ。 そうすれば毎日弘毅に会える。 でもせめて昇格してからの方が、兄貴らしくて箔がついていいもんな。 そうだ!こっちに戻ったら一緒に住んでもいいな。うん、それがいい。そうしよう。 ぐふぐふと込み上げる笑いを堪えながら、弘毅を待つ。 まるで恋人との逢瀬を待ち兼ねるように。 …………待て待て。この考え、ヤバくないか? 俺は兄貴だぞ!?弘毅は俺の弟。 俺も弘毅も立派な成人男子だ。 うん、それは分かっている。 何年経っても身に染み付いた溺愛体質は治らないのか!? もし、もし、もしも弘毅に恋人がいたら!? ……凹むかもしれない…いや、弘毅に相応しいかどうか、俺の目でシッカリと見極めなければ。 それでNGならすぐに別れさせる!! 妙な決意を固めたところへ 「大兄ちゃんっ!」 「弘毅っ…」 突然目の前に、愛らしい笑顔を振り撒く弘毅が立っていた。 「お待たせ!大兄ちゃん久し振り。元気そう、うぐっ」 人目も憚らず思わずハグした。 弘毅は一瞬固まり、思いっ切り腕を突っ張って俺から離れた。 「大兄ちゃんっ!ここ駅っ!」 おおっ…アヒル口も健在か…かわいい…鼻血が出そうだ… 「ぷっ…ごめんごめん。久し振りで嬉しくってな…悪りぃ悪りぃ。」 「悪いって思ってないじゃん。」 ぷんすこ怒る弘毅は、今時の若者で。 俺の記憶の弘毅からオトナになっていた。 「…大きくなったなぁ…」 「一応、社会人ですから。」

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