97 / 280

難敵来襲(8)

むくれる弘毅のご機嫌を取るように猫撫で声で 「なぁ、美味いもん食べに行こうぜ。 肉にするか、魚にするか? あれこれリサーチ済みだから何でもいいぞ。 こっちにいる間は兄ちゃんが奢ってやるから遠慮すんな。」 「えー、割り勘でいいよ。俺だって働いてるんだから。」 「馬鹿言え。俺の顔を立てろ。 久し振りなんだから甘えろ。な?」 「…んー、じゃあ…肉!」 「よしっ。ここからだと…うん、あそこにしよう。ほら弘毅、行くぞ。」 急いで予約のメールを送る…よし、完璧。 弘毅の肩にトンと軽く身体を打つけ、再び構内へ誘導する。 「大兄ちゃん、何処行くの?」 「着いてからのお楽しみさ。 ところでお前…立派に成長したな、うんうん。 でも相変わらずかわいいなぁ。」 「…大兄ちゃん…俺のこと一体幾つだと思ってんの?もう、子供扱い止めて。」 え? 「弘毅、今何て」 「だーかーらー。俺は大兄ちゃんと同じ社会人だから、子供扱い止めて、って言ったの。」 弘毅…弘毅が…俺に反抗した…あの、あのかわいい弘毅が…マジか… がっくりと肩を落とし、黙った俺に 「大兄ちゃん、俺、大兄ちゃんの彼女にヤキモチ焼かれるの嫌だからね。」 「弘毅…俺は今フリーだ…」 「…あ…ごめん。ひょっとして遠距離恋愛って上手くいかなかったの?」 「それ誰に…あぁー、茂明かぁ…くそっ、リア充め…自分は彼女とよろしくやってるからって…」 「大兄ちゃんにはもっと素敵な人が用意されてるよ。焦らなくってもいいんじゃない? 大兄ちゃんイケメンだし頭もいいし性格もいいじゃん。」 「そっ、そうか。そうだな。(ぐふぐふっ) そういうお前はどうなんだ?誰かいい恋人(ひと)いないのか?」 「おっ、俺っ!?俺、俺は…(むにょむにょ)」 弘毅は耳まで赤らめて口籠った。 ん?この反応は!? まっ、まさか、まさか彼女がいるのか!? 俺の弘毅を誑かしたのはどんな女だ!?

ともだちにシェアしよう!