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難敵来襲(10)
受付に予約してあることを告げると、丁寧に席に案内された。
おおっ…夜景が綺麗だ。
デートコースにはもってこいの場所。
彼女はいないけど、かわいい弘毅と一緒だから俺は超満足だ。
どれどれ…弘毅は喜んでるかな?と見遣ると…ぼんやりと窓の外を眺めている。
おい、兄ちゃんとの食事が嫌なのか?
こんな所に連れて来たから怒ってるのか?
いや、違う。怒ってるのではない。心ここにあらず、だ。
……エレベーターの中の『誰と来たのか』から様子が変だ。
何が、と聞かれてもはっきりとは指摘できないが、触れてほしくない話題だったのか、あれから変だ。
俺の“弘毅センサー”はますますメーターが上がっていく。
別にかわいがってる部下と食事に行くのは普通だ。俺だってよく連れて行く。
日頃の労いと感謝と少々のお小言と、コミュニケーションの場として。
ただ、場所は選ぶ。俺だって使える小遣いの額は決まってる。こんな高級店には余程特別な事情がない限り連れては来ない。
せいぜいがチェーン店の居酒屋か焼肉店か、財布の許す範囲でのこと。
いくら肩書きのある高収入(であろう)の上司が、入社して間もない部下を何度も誘うだろうか?
弘毅…お前、その部長とどういう関係なんだ?
まさか…
取引先のあるカップルのことが頭に浮かんだ。
所謂『同性婚』をした彼らは、見るからに普通のサラリーマン。おまけに2人ともイケメンで仕事ができる。
彼らを狙っていた本社の女子 達が喚き散らす様子は、暫く話のネタになったらしい。
遠方のうちの支社にまで噂が広まるくらいだから、あちこちにかなりのインパクトを与えた。最初聞いた時はぶっ飛んだ。
一瞬脳内に、2人の絡みが浮かんでしまった。
どっちが攻で受かは知らんが、会社も容認しているらしい。今ではみんなそれなりに好意的にうけとめているそうだ。
まさか、まさかな。
俺の弘毅に限ってそんなこと。
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