99 / 280

難敵来襲(10)

受付に予約してあることを告げると、丁寧に席に案内された。 おおっ…夜景が綺麗だ。 デートコースにはもってこいの場所。 彼女はいないけど、かわいい弘毅と一緒だから俺は超満足だ。 どれどれ…弘毅は喜んでるかな?と見遣ると…ぼんやりと窓の外を眺めている。 おい、兄ちゃんとの食事が嫌なのか? こんな所に連れて来たから怒ってるのか? いや、違う。怒ってるのではない。心ここにあらず、だ。 ……エレベーターの中の『誰と来たのか』から様子が変だ。 何が、と聞かれてもはっきりとは指摘できないが、触れてほしくない話題だったのか、あれから変だ。 俺の“弘毅センサー”はますますメーターが上がっていく。 別にかわいがってる部下と食事に行くのは普通だ。俺だってよく連れて行く。 日頃の労いと感謝と少々のお小言と、コミュニケーションの場として。 ただ、場所は選ぶ。俺だって使える小遣いの額は決まってる。こんな高級店には余程特別な事情がない限り連れては来ない。 せいぜいがチェーン店の居酒屋か焼肉店か、財布の許す範囲でのこと。 いくら肩書きのある高収入(であろう)の上司が、入社して間もない部下を何度も誘うだろうか? 弘毅…お前、その部長とどういう関係なんだ? まさか… 取引先のあるカップルのことが頭に浮かんだ。 所謂『同性婚』をした彼らは、見るからに普通のサラリーマン。おまけに2人ともイケメンで仕事ができる。 彼らを狙っていた本社の女子(ハイエナ)達が喚き散らす様子は、暫く話のネタになったらしい。 遠方のうちの支社にまで噂が広まるくらいだから、あちこちにかなりのインパクトを与えた。最初聞いた時はぶっ飛んだ。 一瞬脳内に、2人の絡みが浮かんでしまった。 どっちが攻で受かは知らんが、会社も容認しているらしい。今ではみんなそれなりに好意的にうけとめているそうだ。 まさか、まさかな。 俺の弘毅に限ってそんなこと。

ともだちにシェアしよう!