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難敵来襲(12)

弘毅の家に着くまで、電車の中では無言。 ぐるりと周囲を見回すと、イヤホンを付け一斉に携帯を触る人、ひと、ヒト… 一昔前には見られなかった異様な光景に、時代の流れを感じる。 「大兄ちゃん、次降りるよ。」 弘毅の後を追うように歩いて行く。 商店街もあるから買い物も不自由しないな。 治安も良さそうだ。 「ここ。」 社会人になって引っ越したと言っていたが、へぇ…割と駅近くなんだ。 大学入学時に世話してやったアパートよりランクが上がっている。 「用意するから“座って”待っててね。」 弘毅はパタパタと奥の部屋に行ってしまった。 俺は一応「お邪魔しまーす」と声を掛けて上がり込み、遠慮なくあちこちを探索する。 2LDKか。 几帳面な弘毅らしく、きちんと整理整頓されている。 …にも関わらず、物が少ない気がする。 随分長いこと部屋の主人がいないような…生活感が足りないように感じるのはどうしてなんだろう。 キッチンも綺麗だ。 ずっと自炊をしてるはずなのに、ほとんど使った形跡がない。 シンクの下や引き出しを開けてみる。 包丁や鍋や食器はあるのに、ストックしているはずの調味料や缶詰が…ほとんどない。 冷蔵庫を開けた……ビールやバター、味噌なんかはあるけど、野菜室は空っぽだ。 おかしい…おかしい。変だ。 ある一つの結論が閃いた。 『弘毅はこの部屋を使っていない』 じゃあ、一体何処で暮らしているんだ!? 何処で?誰と? ぶわりと鳥肌が立った。 「大兄ちゃん、お待たせ…『座って待ってて』って言ったのに…」 少し苛立ちの混ざった弘毅の声が聞こえた。 「弘毅お前、俺に何か隠し事してないか?」 「えっ!?…急に何言い出すの?…別に何も。」 「お前………ここに住んでないだろ?」 ひくっ、と弘毅が息を飲んだ。 そうか…それが答えか……

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