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難敵来襲(13)
ショックで頭の中は真っ白で何も考えられないまま、弘毅を伴いホテルに辿り着いた。
淡々とチェックインの手続きを済ませ、部屋に入る。
弘毅は俯いたまま一言も発しない。
とにかくひとっ風呂浴びて汗を流してから考えよう。
「俺は先に風呂に入るから。」
荷物を持ったまま立ち尽くす弘毅にそう言い残し、着ている物を片方のベッドに脱ぎ捨てると、真っ裸でシャワールームに入る。
トイレと別なのはありがたい。
鏡に映る俺の顔は、目が釣り上がり我ながら恐ろしい形相になっていた。
弘毅は逃げたりしないだろうか。
そんな情けない根性の奴ではない、と分かってはいても、これから告白される内容――まさか、まさかとは思うのだが――俺の理解できない関係だったらどうしようか、思い違いであってほしいと、そればかりを思っていた。
烏の行水よろしく、あっという間に洗い終え、ドライヤーで髪も乾かし、幾分マシになった顔を確認してから、心臓が飛び出しそうになるのを平然とした風を装い、部屋に戻った。
弘毅!
弘毅はさっきの状態のまま、フリーズしている。
…よかった…帰ってなかった…
「お前も風呂に入ってこい…話はそれからだ。」
びくりと身体を震わせた弘毅は、諦めたように大きく深呼吸すると、鞄から着替えを取り出し、無言で俺の横を擦り抜けて行ってしまった。
俺はスーツをハンガーに掛け、荷物を手早く整理した。
そしてベッドの端に座り込んだ。
弘毅は嘘がつけない。
小さな頃から正義感が強くて真っ直ぐで、誰からも信用されて好かれていた。
俺の指摘が図星過ぎて、パニックを起こしているのかもしれない。
俺の予想では…認めたくないが、弘毅の恋人は恐らく部長だろう。同棲…は彼とに違いない。
入社してまもないのに、一体どうして何がどうなってそんなことになっているのか。
何か弱みでも握られて、言うことを聞かされているのではないのか?
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