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難敵来襲(16)
俺は弘毅と目を合わせた。
時折、溢れ出る涙で潤んでいるが、真っ直ぐに淀みなく見つめ返される。
この目は…マジなやつだ。
「…で?結婚って言うけど、お前達が考える程世間は甘くないぞ。
俺は反対だ。
それに親父とお袋が何て言うか。目に見えてる。相手の家だってそうだろうが。」
「分かってる。だから段取りして、時期を見て伝えようと思ってた。
反対されるのは分かってたから…現実、大兄ちゃんだって即答で反対したじゃんか!
達也さんの家は心配いらないって言ってた。」
「はあ!?当たり前だろ!?どこの世界に『同性と結婚します、よろしくね』なんて言われて『はい、そうですか、OK!』なんて言う家庭があるんだ!?
無理!絶対反対!断固阻止する!
弘毅、会社辞めて家に戻れ!いや、連れて帰る!」
「ほら!そうやって訳の分からないこと言うじゃないか!
俺が自分で見つけて努力して、やっと入った会社なんだ!絶対に辞めないっ!
もし、俺を無理矢理退職させようとしたり、達也さんに何か危害を加えようとしたら、いくら大兄ちゃんでも、絶対に許さないからね!
…絶縁してもらっても構わない。
こんな弟なんていない方がいいだろ?不肖の弟でごめん。
でも、俺は家族と達也さんのどちらを選ぶかって聞かれたら、迷うことなく達也さんを選ぶよ。」
俺は完全にパニクっていた。
弘毅が…あの弘毅が俺に反抗して楯突いている。
自分の恋人 を守るために。
許さない?絶縁?
俺達より恋人を選ぶとも言った。
きっと今は恋に恋してる、そんな状態なのかもしれない。
どうしたら…一体どうしたら目が覚めるんだ!?
そうだ。
弘毅が熱に浮かれて言うことを聞かないのなら、元凶に会って、弘毅と別れるように説得すればいいのか。
よし、そうしよう!
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