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コイツが『恋人』!?(2)
彼らはそれからも暫く頭を下げていたが、漸くゆっくりと顔を上げた。
恐らく緊張と頭を下げ続けたことで、その顔は少し紅潮して見えた。
その頃には弘毅は泣き止んで、彼の隣に寄り添うように立っていた。まるで一対の番鳥 のように。
「とにかく、座って下さい。話はそれからだ。」
俺は自分用に鏡台の椅子を引き寄せて座り、空いた椅子を勧めた。
「では、遠慮なく…失礼します。弘毅、そちらに。」
耳に心地良いバリトンボイス。顔だけじゃなくよく聞くと声もいいじゃないか。
彼は弘毅をエスコートするように座らせると、もう一度「失礼します」と会釈して座った。
堂々たる振舞い。
こんなハイスペックイケメンなら、女だって選り取り見取りだろうに、どうして弘毅に目を付けたんだ?
「何故弘毅なんですか?
はっきり言ってあなたみたいに顔もスタイルもいい、肩書きもあって、結婚相手として最優良物件な人なら、条件の良い女性が選び放題でしょうに。
何でわざわざ同性の弘毅を誑かして手懐ける必要があったんですか?」
「大兄ちゃんっ!」
咎めるような弘毅の声に、彼はチラリと弘毅を見た。そして心配するな、とでも言うように頷くと
「性別は関係なく…弘毅だから…弘毅自身を好きになって…愛してしまったんです。
自分の見た目は、自惚れかもしれませんが自覚しています。
私の意思とは全く関係なく、かつて社内や取引先で私を巡って騒動が起こり、社長や幹部と相談の結果、営業職から外されました。海外勤務の夢も、それで潰 えました。
誰にも文句を言われない実績を挙げていただけに、当時はかなり落ち込みましたし、転職も考えました。
表面は平気なフリをして、裏では他人を恨み信用せず、自分は一生独身で終えてもいいと……私の人生は世捨て人のように味気ないものになりました。
…それ以来、女性に対して冷ややかな目で接するようになったのは事実です。」
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