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兄貴の度量(2)
酒の勢いを借りて眠りにつこうとしたが、目が冴えて全く眠れない。
ぐるぐると頭を色んな考えが巡る。
無理矢理にでも引き離して弘毅を実家に連れて帰ろうか。
アイツを社会的に攻撃して、日の当たる場所を歩けないようにしてやろうか。
いや、そんなことをすれば一生弘毅に恨まれる。
そうかと言って、認めるのもおかしい。しゃくだ。
あんな感情を露わにする程、アイツのことを愛しているのならば、弘毅の一番の理解者として認めてやろうか。
待て待て、あんな奴に『お義兄さん』なんて呼ばれたくはない!
俺一人で…こんな大事なことを抱え込むのはどうなんだろう…
両親には絶対に言えない。言おうもんなら弘毅達に何をするのか分からない。
うーん……そうだ、茂明!俺よりしっかり者の茂明なら、何かいい知恵を出してくれるかも。
思い切って茂明に電話をしてみた。
「…はい。にーちゃん久し振り。生きてた?
こんな時間にどうしたんだ?」
「茂明…俺は倒れそうだ。遅くにごめんな。俺今出張で東京にいるんだけど。
ちょっと込み入った話なんだが…」
「ちょっと待って…………うん、いいよ。
何かあった?」
「アリだよ、大アリ!単刀直入に言うぞ。
…弘毅が、男と付き合ってる。
職場の上司で部長職だ。かなりやり手のイケメンだった。
許してもらえないなら強硬手段でそいつの籍に入れるって。
なぁ、どうする?無理矢理別れさせても後々尾を引きそうで。お前ならどうする?」
「オトコぉ!?…やるなぁ、弘毅。イケメンの部長って……にーちゃん、直接相手と会ったのか?」
「あぁ。そんで、改めて明日の午後からサシで会うことになったんだ。」
「ふーん…明日か……俺も行こうかな。」
「え!?休み取れるのか!?マジで!?」
「うん。多分取れる。俺も弘毅の相手を見てみたい。」
「来てくれるなら心強いよ。
でもお前、反対しないのか?」
「だって曲がりなりにも弘毅が選んだ相手なんだろ?
じゃあちゃんとジャッジしてやらないと。」
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