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兄貴の度量(4)

確かに茂明の言う通り、俺はクソ真面目で融通が利かない。おまけにA型気質も頻繁に発動する。 『長男だから』と言われ続け、余計にしっかりしなきゃと肩に力が入り、その結果空回りする。 少しでも自分の枠から外れると認めないし譲れない。 それに比べて茂明は、良きも悪しきも“俺”というお手本が身近にいて、俺や他人の失敗をよく見ているから学習し冷静に上手く立ち回る。 元々のほほんとした性格で落ち込まないし、例え落ち込んでも一晩寝れば通常運転だ。 何かあっても両親も『まぁ、茂明だから』という感じでスルーする。俺や弘毅の扱いとはまた少し違う。 我が弟ながらまったくもって羨ましい。 あの図々しいと感じる部分を分けてほしいくらいだ。 そうすれば俺はもっと気楽に生きていける気がする。 兄貴の威厳は何処へやら、何かあれば冷静な茂明を頼ってしまう自分が、心底情けなくなる。 それは思春期から自覚しているコンプレックスだ。 自分でも直したい性格だと思いつつも、そう簡単には修正できない…変われない。 弘毅のことだって…茂明は予想に反して受け入れていた……俺と同じように絶対に反対すると思っていたのに。 まさか認めるつもりか?いや、それはないだろう。 もし弘毅の味方についたら 『やっぱり小にいちゃんは俺のことを1番分かってくれてる』 なーんて評価が急上昇して、反対した俺はそれこそ絶縁対象になるかもしれない。 そんな馬鹿な。あり得ない。 弘毅にとっての1番は俺だ! ………あー…滅入る。色んな意味で落ち込む。 目の前にはビールのロング缶が2本既に空っぽになっていた。 明日の決戦を前に休まねばならないのに全く眠くない。 ガシガシと頭を掻いて、ベッドに倒れ込んだ。 情けねぇなぁ。 俺は『にーちゃん』なのに。 目を閉じても一向に訪れない眠気を呪いながら、朝を迎える羽目になった。

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