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兄貴の度量(5)

完全に寝不足だ。 それでも腹は減る。うん、健康ありがとう。 部屋の中はまだ少しアルコールの臭いが漂っていた。 ため息をつきつつ、少し痛む頭を押さえ洗面所に向かい鏡を見た。 うわぁ、最悪……髪はボサボサ目は充血して、覇気のないオッサンがいた。 取り敢えず、シャワーでも浴びるか。 一応小綺麗にして身支度を整えると、1階のレストランへ向かった。 俺みたいなサラリーマンらしき雰囲気の人だかりを掻き分けて目当てのおかずを幾つも皿に乗せ、いつもよりゆっくりと時間を掛けて食べた。 家だと朝からこんなに食べないのに、バイキングとなると途端に“元を取らねば”と貧乏性が出て胃が活動する。 締めにコーヒーとグレープフルーツジュースを飲み、ちょっと食べ過ぎたか、と反省する。 腹も満たされてやっと頭もクリアになり、部屋へ戻ったところへ、着信音が鳴り響いた。 画面は『茂明』。 「おはよう、昨日もありがとうな。休み取れたのか?」 『にーちゃん、おはよう!うん。大丈夫。 夕べどうせロクに寝てないんだろう?』 「…何だよ…見えんのかよ。」 『ははっ、何となく、ね。 俺、今新幹線に乗ったから昼前にはそっちに行けるよ。昼飯どうする?駅弁か何か買って行こうか?』 「おう、流石気が効くな。何でもいいし買ってきてくれ。お前とじっくり話したいし。」 『りょーかい!じゃ、後で!』 「おう、気を付けてな。」 こっちに向かってると分かって、情けないけどホッとした。 2対1なら、こちらに分がある。 今日は弘毅がいないから、突っ込んだ話もできる。流石に本人を目の前にして、言いにくい話題は振れないからな。 俺はちょっと気分的に楽になり、茂明が来るまで忘れていた報告書を片付けようと引っ張り出した。

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