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兄貴の度量(6)
仕事も粗方目処が立った頃、チャイムを鳴らす音が聞こえた。
茂明だ。
がちゃり
「にーちゃん、久し振り。思ったより…まともな顔してるじゃん。
ショック受けてぶっ倒れてるかと思ったのに。
はい、これ。美味そうな駅弁があったからそれにした。コンビニ弁当は飽きちゃったし。」
「おっ、サンキュー。お前は相変わらず元気そうだな。彼女と上手くやってんのか?」
「うん、一応ね。喧嘩しながらも仲良くしてるよ。」
「くそっ、リア充め。
今日泊まれるのか?泊まれるならそのままここ使えばいい。
…本当は弘毅と泊まるはずだったんだけど、こんなことになってしまって…まだキャンセルしてないんだ。お前に聞いてから、と思って。」
「多分そうかな、って。勿論泊まってくよ。
俺も明日明後日休みだから。そのつもりで来た。
後々話しなくちゃならないだろうし。
で?いつからそんな関係だったんだ?
弘毅ってノーマルだっただろ?」
「昨日の話ではな……」
俺は昨日のことをできるだけ正確に私情を交えずに伝えた。
茂明は頷きながら黙って聞いている。
ひと通り聞き終わった後
「…完全なる両思いじゃん。にーちゃん、これは引き離すのは中々難しいよ。一過性の熱じゃなくって本気だと思うよ。
一つ言えるのは…弘毅を無理矢理連れ戻したら、アイツの心は壊れてしまう。
だから、反対するにしても認めるにしても、2人の思いをちゃんと聞いて受け止めてから、俺達がどうするか考えなきゃ。
…親父とお袋に言うのはその後だよ。」
「あぁ、分かってるよ。
親父達には…言えねぇな…」
「耳に入ればとんでもない大騒ぎになる。
特に親父は。
できれば修羅場は避けたいからね。」
頷いて、2人でため息をついた。
その後は、その話題にワザと触れないようにお互いの近況を伝え合ったり、仕事の話なんかをして、腹の虫が鳴くと同時に昼ご飯を食べた。
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