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兄貴の度量(7)
そうこうしているうちに、約束の時間が近付いてきた。
「…そろそろだな。」
「うっわー、緊張してきた。弘毅の心を射止めたのはどんな男 なんだろう…」
茂明…お前、どうしてそんなに呑気なんだ!?
俺達のかわいい弘毅の一生が掛かってるんだぞ!?
俺は茂明を呼んだことを後悔し始めていた。
そして…14時ジャスト。
ピンポン
茂明が飛んで行ってドアを開けた。
「はい。」
「14時にお約束していた赤石達也と申します。
若林勝義さんはいらっしゃいますか?」
「はい!俺も若林です。初めまして。弘毅の2番目の兄の茂明と言います。
さ、どうぞ。」
「2番目のお兄さん?初めまして。失礼します。」
「ええ、そうです。すみません、急遽俺もこちらに来ることになって…」
「そうでしたか。お目にかかれて尚更良かったです。」
何和やかなムードになってんだよ。
茂明、お前何しに来たんだ!?
俺のイラつきを感じているのかいないのか、奴は昨日と同じく泰然と俺の近くにやって来た。
「今日はお時間を取っていただき、ありがとうございました。
お義兄さん方のご納得のいくように話させていただきますので、よろしくお願い致します。」
納得なんてするかよっ!
「…こちらこそ。仕事お忙しかったんじゃないですか?」
「私の一生が掛かったことなので、何とでも都合をつけます。
安心して任せられる部下もおりますので。」
「そうですか…どうぞ、掛けて下さい。」
「では失礼します。」
「赤石さん、とおっしゃいましたよね。
兄から昨日の話は聞きました。
あれこれと不躾な質問をすることをご了承下さいね。
弘毅を選んだのは何故なんですか?」
「…見染めたのは私が先でした。応募された履歴書を見た瞬間、一目惚れでした。
面接をした時に確信しました。
実際に、一緒に仕事をするようになってからは…とは言え、私が直接関わることはほとんどありませんでしたが…」
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