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兄貴の度量(8)
その頃を思い出したのか、すっ…と奴の頬に朱が刺した。
「何事にも一生懸命でひたむきで。
新しいことにチャレンジして吸収しようとする前向きな姿勢にも好感を持ちました。
そういうのは雰囲気で伝わってきます。
素直で嫌味なところが全くない。
きっと家族に大切にされて愛情たっぷりに育ってきたんだろう、こんな性格なら友人にも恵まれているはずだと思いました。
それに料理も上手で私はすっかり胃袋を掴まれてしまったんです。
告白して拒否されたらすっぱりと諦めるつもりでした。
でも、彼が体調を崩した時に思いを告げ合って…お互い同じ思いであることが分かって、結婚を前提に付き合うようになったんです。」
「じゃあ、無理矢理ではなく弘毅もあなたのことを慕っていた、ということなんですね?」
奴は頷いた。
「そんな家族に大切にされてきた弘毅ならば、困難しかない将来を…道を外した関係をその家族達が祝福するはずはない、と思わなかったんですか?」
おっ、いいぞ茂明!もっと言えっ!
「それは…当然考えました。今も許しを得るにはどうすれば良いのか、そればかりを考えています。
しかし、私達は性別を超えてお互いを必要とし愛し合っています。
私の伴侶は彼以外考えられません。
世間的には中々理解し難い関係なのかもしれません。
困難な道が待っている、と2人とも覚悟しています。
それでも、私達は一緒に手を繋いで前へ歩んでいきたい。
何があっても命に変えても彼を守り幸せにします。
ですからどうか」
「俺はね、赤石さん。
身近にそういうカップルがいるから、色眼鏡で見ることはないんですよ。
ここ最近、BLってジャンルが確立したり、全世界でLGBTについての論争があったり主張したり、昔に比べたらその扱いに雲泥の差がある。
けどね、でも、やはり世間の風当たりは強い。」
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