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兄貴の度量(9)
「自分の大事な弟を敢えてそんな騒動の中に巻き込みたくないんですよ。
弘毅には『普通に』恋愛して『普通に』子供を作って『普通に』幸せになってほしいんです。
特別なことは望まない。
子供はどうするんですか?
どうするって言っても、絶対に無理じゃないですか。
子孫を残していけないんですよ?
やっぱり女の方がいいって、弘毅を捨てたりとかしない確証なんてあるんですか?
…あなたが弘毅のことを本気で愛してくれているのなら、別れて下さい。
その方がお互いのためだ。」
おおおっ…茂明に後光が差している…
流石に冷静で頭の切れる弟よ…
にーちゃんの威厳なんてどっかに飛んでいってしまったぜ。
お前を召喚して正解だった。
心の中で大拍手をかまし、俺が言った訳でもないのにドヤ顔をしてふんぞり返った。
すると…奴は背筋を更にピッと伸ばして、俺達を真っ直ぐに見つめると
「ご家族ならそう思われて当然です。
…子供については…これはまだ弘毅と相談してはいませんが…彼が望むなら親戚筋から養子を迎えることも考えています。
経済的なことなら、私に何かあっても、例え弘毅が一生働かなくても食べていける蓄えがあります。
『普通』って何でしょうか?
常識と呼ばれるものだって、時代と共に変わるものも沢山あります。
私は真剣です。本気で彼を愛しているからこそ2人で幸せになりたい。
弘毅と別れることなんて考えられません。
どうか、どうか私達のことをお許し下さいっ!」
椅子から降りるとそのまま土下座してきた。
うわっ、『ザ・土下座』。
…しかし、コイツの土下座は今まで見た中で1番心に伝わってくる…
「そんな…どうか頭を上げて下さい!」
茂明の声にも、奴はぴくりとも動かない。
俺達が顔を見合わせたその時、チャイムが鳴った。
???
ルームサービスも頼んだ覚えもないけど?
首を傾げながら茂明がドアに向かった。
奴は相変わらずそのままで…
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