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兄貴の度量(11)

「あっ、そうだ。喉渇いたよねぇ。 みんなコーヒーでいい?」 茂明は俺達の返事も聞かず、フロントを呼び出した。 そして4人分のコーヒーを注文すると 「弘毅、久し振り!元気にしてたか? …ってか、お前めっちゃ肌艶イイんだけど…」 「小にいちゃん…」 「赤石さんの思いは聞いた。 お前は?お前はどうなの?」 「俺は達也さん以外考えられない。 何があってもこの人について行く。 苦労するかもしれないけど、達也さんとなら乗り越えれる。一生、この人と添い遂げたい。」 「後悔しないのか?」 「うん。後悔なんかしない。」 茂明は、弘毅をじっと見つめ、次に奴を見た。 ゆっくりと頭を下げた奴は、そのまま動かなかった。 「何があっても後悔しない、思い合ってる、ってことなのか?」 「うん。俺の運命のひとは達也さんなんだ。 男だとか女だとか、性別なんて関係なく達也さんを愛してる。 俺が俺らしくいられるのも、達也さんの前だけ。 この先どんなことがあっても、俺は達也さんと一緒にいたい。」 茂明は弘毅を見つめていた…そして、ふうっ、とため息をつき口を開き掛けたその時、チャイムが鳴った。 「あ、コーヒーだ。ちょっと待ってて。」 受け取りを済ませると、俺達の前にセットしてくれた。 「赤石さん、さ、どうぞこっちに座って。にーちゃんも弘毅も。 まぁ、一服しようや。」 「…小兄ちゃん、ありがとう。いただきます。」 弘毅が奴を促して口を付けた。 「お気遣いありがとうございます。いただきます。」 暫し沈黙…コーヒーのいい香りが部屋に立ち込める。 振り切れた頭もクールダウンしてくる。 改めて奴を見る。 悔しいけどイケメンだ。着ているスーツも靴も時計も、おそらくブランド品だろう。 これだけのハイスペックな男が、どうして女でなく弘毅なのか。 奴の言葉が蘇って来た。 『性別は関係なく…弘毅だから』

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