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兄貴の度量(12)
隣に座る弘毅に目を遣る。
少し離れて座ってはいるものの、膝が奴の方を向いている。そして時々確かめ合うように視線を絡め見つめ合っている。
完全に恋人の仕草じゃん。
…俺達の反対が付け入る隙間はないってことか。
ここで考えねばならないのは、弘毅の幸せだ。
このままこの関係を無理に断ち切れば、俺達は一生弘毅に恨まれ続け、下手すれば絶縁だ。
二度と弘毅に会えなくなるかもしれない。
認めれば…世間の好奇な目に晒されて後ろ指を指される人生を送らせてしまうことになる。
でもその場合は、どれだけでも俺達がフォローできる余地があるってことだ。
弘毅は…奴と一緒になることを望んでいる。
奴も…命を掛けて弘毅を守ると言っている。
俺は茂明を見た。
視線に気付いた茂明はカップを置くと
「実はさ、俺の彼女のお姉さんがね、そうなんだよ。
相手は2つ上の女性。
だから、そういう関係に偏見はないんだ。
俺の彼女の家は受け入れてくれたけど…
相手の親は何とか別れさせようとあの手この手を使って…警察沙汰スレスレのことも含めてね。
かなりエゲツないことやりやがった。
どうやっても認めてくれなくて、最終的に完全に絶縁された。
そういう過程を経て結ばれた2人を間近で見てたから、軽々と『絶縁』なんて言葉を使ってほしくないんだよ。
弘毅、家族に縁を切られるって、どういうことか分かるか?親子兄弟の縁を切るって、どんなに辛くて大変なことか分かるか?
お前は今、一時の感情で物を言っているかもしれない。でもな、現実は厳しいぞ。」
弘毅と奴は、真剣な目をして見つめ合い、即座に頷いた。
どちらからともなく重ねられた手が、その決意を表しているように見えた。
「うちの親からは徹底的に叩かれるかもしれない。
赤石さん、それでも弘毅を選びますか?」
「はい!どれだけ非難を浴びようが罵られようが、弘毅と共に生きていけるなら、私はどんなことも受け入れます。」
「達也さん…」
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