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兄貴の度量(15)
弘毅の涙のお願いに半ば押し切られるようになり、俺はヤケクソで叫んだ。
手をついたままの奴は顔だけ上げ、それ以上の声を張り上げた。
「勿論です!お約束します!
私は弘毅君を大切な生涯の伴侶として愛することを誓います!
健やかな時も病める時も、共に支え合って前へ歩んでいきます!
お義兄さん、弘毅君を私に下さいっ!」
「……結婚式かっ…」
思わず悪態をついた。
弘毅は奴の言葉に感動したのか「達也さん…」と言ったっきりふるふる震えている。
けっ。俺の大事な弘毅を。
何が悲しくてこんな奴に、よりによってこんな男にくれてやらねばならんのだ。
くそっ。
「…弘毅…お前、何があっても後悔しないんだな?」
「絶対に。後悔なんかしない!
達也さんがいてくれたらそれでいい!」
「弘毅…」
「達也さん…」
じわじわと2人の距離が迫る。俺達がいなかったら、熱い抱擁が始まりそうだ。
「…くそっ、分かった!…認めてやる。
けど、赤石さん!
もし弘毅を泣かせるようなことがあった時には…身の振り方を覚悟しておいてくれ。」
「お義兄さん…ありがとうございますっ!」
奴はもう一度頭を下げた。
だーかーらー
お前から『お義兄さん』と呼ばれたくないんだよ。
「大兄ちゃん…ありがとう…」
大粒の涙を流す弘毅はそう言った後、奴に縋り付いてまた泣き始めた。
奴はそんな弘毅をそっと抱きしめて、あやすように背中を撫でている。
あーぁあーあ…かわいい弟のラブシーンなんて見たくもねぇ。
ふいっと顔を横に逸らすと、いきなり背中に衝撃が走った。
「いってぇ!」
「あははっ!にーちゃん、男気見せたな!
さっすが俺達の頼れる兄貴。
俺は絶対に許すと思ってたよ、にーちゃん。
赤石さん、弘毅。これからは俺達が味方だ。
うちの親をどうするか、攻略法を考えていかないとな。」
ドヤ顔の茂明がガハハと笑っている。
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