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兄貴の度量(17)
弘毅の楽しそうな声が途切れ途切れに耳に入ってくる。
一応、俺達の了解を得たことで緊張の糸が解けたんだろう。
奴はかなりマメで気配りが凄い。
イケメンで高収入で高身長で。世の中の男が羨むものを全て持っている。
所謂『スパダリ』という部類の男なんだろう。
悔しいけれどそれは認める。
言葉や態度のあちこちから弘毅にぞっこんなのが見て取れる。
これは弘毅が、というより奴の方が弘毅にメロメロっぽい。
弘毅に対しては…俺以上の過保護っぷりを発揮している。本人は俺達の前だからかなり抑えている風に装っているが、残念、ダダ漏れだ。
会社でどうやってるんだろう。
同じ部署なんだろ?
誰かにバレたりしてないのか?
「…おい、弘毅。」
「何、大兄ちゃん?」
「お前達、会社でバレていないのか?」
「うん!
係長だけは知ってて、理解して応援してくれてる。バレそうになった時なんかも上手くフォローしてくれるんだ。
他の人達にはバレてないよ。」
「係長?」
「優しくて頭もキレて凄くいいひと。」
「ふぅ〜ん…バレてないならいいけど…」
「あ!着いた!大兄ちゃん、小兄ちゃん、ビールの他に何か飲みたい物ない?」
「あ、俺缶チューハイ!ぶどうのやつ!
にーちゃんは?」
「俺はビールだけでいい。」
「分かった。ちょっと待っててね。」
弘毅はいそいそと奴と車を降りて、肩を並べるようにしてスーパーに入って行った。
「…おい、茂明っ!」
「なぁーに?」
「お前、何応援部隊に切り替わってんだよっ!
裏切り者めっ。俺はな」
「にーちゃん、ストップ。
2人になった時にちゃんとお小言は聞くから。
今は弘毅が幸せになる方向だけを考えようぜ。
アルコールが入ったら本音が出るからね、その辺も見とかないと。」
「茂明…何でそんなに冷静なんだ?
大事な弟の一大事なんだぞ?
弘毅のことがかわいくないのか?」
「にーちゃん…かわいいからこそ否定するだけじゃなくて認めてやらなきゃならないことだってあるだろ?」
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