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兄貴の度量(18)
茂明はふぅ、とため息をついた。
「にーちゃんは弘毅をどうしたいの?
自分の言うことを聞く従順な操り人形だとか思ってんじゃない?
弘毅は意思を持ったひとりの人間だ。
俺達の後をついて回ってた幼い弘毅じゃない。
挫折して転んでも起き上がり、自分の足でしっかり立って歩いてるんだ。
弘毅には弘毅の人生がある。
俺はあいつが思うように生きていってほしい。
俺にとって弘毅は大切な弟だよ。
勿論手助けはする。
何がいいとか悪いとかじゃない、弘毅が幸せかどうかだ。」
一気に捲し立てると、茂明は黙った。
俺は反論することもできず、ただ同じように黙っていた。
気不味い。重い空気が毛穴から侵食してくるようだ。
確かに、茂明の言うことは最もだ。
何を考えなければならないのか――それは弘毅の幸せだ。
俺にとっても弘毅は大切な弟だ。幾つになってもそれは変わらない。
弘毅の人生か…
ガチャッ
「お待たせ!…大兄ちゃん、小兄ちゃん、どうかした?」
「何でもないよ。腹が減って力が出ないだけさ。
な、にーちゃん?」
「おっ!?おう…」
「お待たせしました。すぐに食べれるものばかりですから。」
「そりゃ楽しみだ。赤石さん、とことん飲みましょうね!」
「ええ、ぜひ!」
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