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兄貴の度量(20)

俺は姑か小姑か! そうツッコミながらも、視線は動くことを止めない。 センスの良さが散りばめられた空間。 小綺麗に片付けられた日常の細々とした物。 弘毅は勿論だが、この赤石という男もきっと綺麗好きなんだろう。 さり気なく視線を這わせる俺とは対照的に、茂明は無遠慮に 「ねぇ、ねぇ、部屋見てもいい?寝室には入らないから! ダメなとこはダメって言って!覗かないから!」 「小兄ちゃん…寝室って…」 「あははっ、どうぞ。弘毅、案内してあげて。」 「へへっ、サンキュー。人ん()ってめっちゃ興味あるんだよ。 俺も一応家の(あるじ)だし、ちょっと参考にしたくって。 うわぁ、何処も綺麗にしてるなぁ…ほら、にーちゃんも見せてもらおうよ。」 待ってました!グッジョブ、茂明。 さり気なく立ってキッチンを覗く。 水垢ひとつ付いてないシンク。 整理された調味料。 弘毅はここで、奴のために腕を振るっているのか。 奴は備え付けの食器棚からグラスを出したり、野菜を幾つか取り出してサラダでも作っているのか包丁を使い、手慣れた風に夕飯の準備をしている。 そうか…弘毅だけに家事の負担をさせていないってことか… 「やっぱり収納は多いほうがいいなぁ。うちは出しっぱだから落ち着かなくって…もう少し広い所に引越ししようかな…なぁ、弘毅、これどうやって使うの?」 隣の茂明は、弘毅を質問攻めにしながら、嬉しそうに探検している。 …洗面所には仲良く並んだ2本の歯ブラシ。 あぁ、そうなんだよな、2人で暮らしてるんだよな。 ここの物全てが、優しいオーラで包まれているような気がしてならない。 それだけ2人が愛し合っているってことなんだろうな。 これはもう、観念して認めざるを得ない、のか…

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