133 / 280
兄貴の度量(20)
俺は姑か小姑か!
そうツッコミながらも、視線は動くことを止めない。
センスの良さが散りばめられた空間。
小綺麗に片付けられた日常の細々とした物。
弘毅は勿論だが、この赤石という男もきっと綺麗好きなんだろう。
さり気なく視線を這わせる俺とは対照的に、茂明は無遠慮に
「ねぇ、ねぇ、部屋見てもいい?寝室には入らないから!
ダメなとこはダメって言って!覗かないから!」
「小兄ちゃん…寝室って…」
「あははっ、どうぞ。弘毅、案内してあげて。」
「へへっ、サンキュー。人ん家 ってめっちゃ興味あるんだよ。
俺も一応家の主 だし、ちょっと参考にしたくって。
うわぁ、何処も綺麗にしてるなぁ…ほら、にーちゃんも見せてもらおうよ。」
待ってました!グッジョブ、茂明。
さり気なく立ってキッチンを覗く。
水垢ひとつ付いてないシンク。
整理された調味料。
弘毅はここで、奴のために腕を振るっているのか。
奴は備え付けの食器棚からグラスを出したり、野菜を幾つか取り出してサラダでも作っているのか包丁を使い、手慣れた風に夕飯の準備をしている。
そうか…弘毅だけに家事の負担をさせていないってことか…
「やっぱり収納は多いほうがいいなぁ。うちは出しっぱだから落ち着かなくって…もう少し広い所に引越ししようかな…なぁ、弘毅、これどうやって使うの?」
隣の茂明は、弘毅を質問攻めにしながら、嬉しそうに探検している。
…洗面所には仲良く並んだ2本の歯ブラシ。
あぁ、そうなんだよな、2人で暮らしてるんだよな。
ここの物全てが、優しいオーラで包まれているような気がしてならない。
それだけ2人が愛し合っているってことなんだろうな。
これはもう、観念して認めざるを得ない、のか…
ともだちにシェアしよう!