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酔虎(2)

「はい、じゃあグラスを持って……… 本日はお招きいただきまして、ありがとうございますっ。 ここにいる俺達と、俺達に繋がる皆んなが幸せになりますように……乾杯っ!!」 「「乾杯っ!!」」 「……乾杯。」 ぷはぁーっ…染みる… 茂明、何だよ今の乾杯の音頭。合コンか。女子受け狙いか。ここには女子なんていねーぞ。 お前、飲み会でいつもこんなこと言ってんのか? 「あ、達也さん、サラダ俺が取り分けます! にーちゃん達、好きなの取って!」 「いや、いいよ。俺が」 「達也さんも好きなのを取って下さいね。」 「弘毅こそ」 「いいえ、達也さんどうぞ!」 甘い。 甘いんだよ。 目からも耳からも砂糖を流し込まれていくような甘ったるさ。 ただただイチャイチャしているだけにしか見えない。 俺は黙って寿司を食っていた。 「大兄ちゃん、唐揚げ好きだろ? ここのボリュームがあって生姜が効いてて美味しいんだよ!」 フリルレタスの上に唐揚げが置かれた。 「そうか、ありがとう。」 素直にお礼を言って口に放り込む。 噛み締めると、それはまだ熱々で、じゅわりと甘辛い味が口一杯に広がった。 「………美味い。」 「でしょ?小兄ちゃんも食べてみて!」 「もう食べてるよぉ。美味い! ……ねぇ、赤石さん、俺より年上だけど『達也』って呼び捨てにしてもいいですか?俺のことも『茂明』で。 ってか、ぶっちゃけタメで喋ってもいい?」 奴は笑いながら 「勿論!」 「なぁ、にーちゃんもタメでいいよな? その方が本音で喋れるよな。」 何勝手に決めてんだよ! お前何オープンハートしてんの?阿保! 茂明をジト目で睨み付けるが、気付いていない。 ご機嫌でひたすら飲んでは食べている。 コイツは…ザルだったな。 俺は…の本音を聞くまでは酔わないからな!

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