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酔虎(3)

「ぐすっ…らからぁ、なんれおまえなんかにかわいいこーきをやらなきゃなんねぇーんらよぉ! ぐすっ、うっ…」 「あーぁあ…にーちゃん泣くなよ。完全に飲まれちまったな… 達也、ごめん。にーちゃん、泣き上戸なんだよ。」 「大兄ちゃん、そんなに飲んだかな…俺、水持ってくる!」 「緊張の糸が切れたのかもな…勝義、横になるか?」 「おいっ、たつやっ!そこにすわれっ!」 「はいはい。」 「おまえさ、ほんとに、ほーんとーになにがあっても、こーきをまもるのか? …もし、こーきをすてたら」 「捨てるなんて!あり得ない! 俺には弘毅しかいない。 一生、いや生まれ変わっても弘毅を愛して守り続ける! 誰が何と言おうと俺には弘毅だけだっ!」 「…達也さん、恥ずかしいからもう止めて。 大兄ちゃん、はい、水。 ………大兄ちゃん、しつこい。何度聞いたら気が済むの?ここに来てからでも、それ20回は聞いてるよ……もういいよね?」 「こーきぃ…ぐすっ…よめにいってしまうのかぁ…ずっ…おれの、おれのこーきがぁ…」 「にーちゃん、はいティッシュ。 ほら、唐揚げ美味いぞ。泣かずに食え食え。 コイツらの思いは、耳にタコぶら下がって落ちるくらいに聞いた、っつーの。 そこら辺にタコがうようよしてるよ。タコパでもするか? なぁ、いい加減大人になろうぜ。」 「うっ…なんだよぉ…しげあきぃ…おれの、おれのこーきがぁ…ぐすっ」 「大兄ちゃん…しっかりして!………こんなに酒癖悪かったっけ?」 「うーん……余程ショックだったんだろ。 まぁ、いいや。引き摺ってでも連れて帰るからさ。」 「なんらとーぉ?おれはよってねーぞ! おい、たつや!おまえんちのかぞくこーせいおしえろっ。」 「完全に酔っ払ってるな……分かった。」 「達也、それも無視していい。 もう5回は聞いてる。」 突然、目の前がぐにゃりと歪み、俺はそのまま意識を手放した。

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