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酔虎(4)

頭痛ぇ……気持ち悪い気がする…気がするんじゃなくて気持ち悪い……やべぇ、飲み過ぎたか。 んー…今何時だ? 昨日に引き続き、微かにアルコールのする薄暗い部屋… あれ?ここ何処だ? 視線を這わせ、徐々に戻ってくる意識を手繰り寄せ、ゆっくりと上体を起こした。 「痛ぇ…」 身体もバキバキになってる。 ん?床で寝てたのか?どうりで痛いはずだ。 ベッドじゃないってどういうことだ? ふぅ、と大きく息を吐き、掛けられた布団を見て、ホテルではないことを確信。 人の気配を感じて横を見ると、茂明が幸せそうなバカ面をして眠っていた。 ここは……あー、達也と弘毅の愛の巣。 そうか、俺はあのまま酔い潰れて寝てしまったのか。 ところどころに蘇る醜態…恥ずい。酔って記憶をなくしたフリをしておこう。 かちゃり 音のした方を見遣ると、弘毅がドアからそっと覗いていた。 「大兄ちゃん、おはよう。起きた?大丈夫?」 弘毅は声を潜めて聞きながら寄ってきた。 「あぁ、おはよう。二日酔いで頭痛いけど大丈夫だ。 すまん、俺酔い潰れてそのまま寝ちまったんだな。迷惑掛けた。」 「ううん。水持ってくるね。」 弘毅はキッチンに消えて行った。 隣の塊が、もぞもぞ動いたかと思うと 「うー…にーちゃん、おはよう…」 「茂明おはよう…夕べも迷惑掛けたっぽいな、すまん。」 「いいけど…にーちゃん、案外酒弱いのな。 酷かったぜ、達也に散々絡んでさ。 『何があっても弘毅を守るのか』 『何でお前みたいな奴に弘毅をやらなくちゃやらんのだ』 とかさ。 俺達最低20回はそれ聞いたよ。 達也ん家のことも何度も何度も聞いてさ。 こんな酒癖悪いって思わなかったよ。」 「え…マジか…」 「挙句に潰れて、幾ら達也と俺でもにーちゃん重過ぎて動かせなくって。 結局ここで泊まったんだけど。」 「…面目ない…」 「大兄ちゃん、お水。小兄ちゃんおはよう。」 「サンキュー。」 「おう、おはよう!」 記憶は忘却の彼方へ……知らぬフリを決め込んだ。 弘毅がカーテンと窓を開けた。 うっ、眩しい。 爽やかな風がアルコールの臭いを飛ばしていく。

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