139 / 280
酔虎(6)
4人揃って食卓を囲んでいるが、並べられているのは3人分。
達也はいつも朝食いらない派らしい。
コーヒーを飲むその姿すら様になる。爆ぜろ、イケメン。
本当は弘毅も朝はあまり食べない。一緒に住んでいた頃は無理矢理に食べさせて登校させていたが、生活スタイルの変わった今では、自分達のペースを作っている。
それが何か悔しい。
今日は俺達に合わせてくれているようだ。
俺達3人の顔を交互に見ながら、嬉しそうに口に運んでいた。
コーヒーカップを置いた達也が口を開いた。
「2人とも今日の予定は?明日まで休みとってるんだろ?」
「あぁ。明日の10時過ぎの新幹線で帰るつもりだ。茂明もそれくらいだろ?
いや、予定は特に決めてないんだ……弘毅の行きたい所に連れて行ってやろうと思ってたから…」
「うん。俺も昼前には出るつもり。
だから今日は目一杯付き合えるよ。」
「そうか。
弘毅、皆んなで行きたい所は?どこでもいいぞ。」
あー…また甘い視線で弘毅を見つめている… 弘毅、お前も見つめ返すな!にーちゃん、目のやり場がないじゃないか。
朝から蜂蜜を流し込まれてる気分だ。
「え!?いいんですか?……じゃあ……水族館!」
「「「水族館!?」」」
意外な答えに俺達の声がハモった。
弘毅は、えへへと恥ずかしそうに笑いながら言った。
「ずっと行ってみたかったんだ。」
「言えばデートで連れて行ったのに。」
「流石に子どもっぽいかな、って。」
見つめ合ってくすくす笑う2人に、もう突っ込む元気はなかった。
「じゃあ、野郎4人で行くとするか。
都内に幾つかあるんだろ?何処がいいんだ?
俺もにーちゃんもさっぱり分からないから、弘毅に任せるよ。」
「1番人気のホテルの中にある水族館!」
早速携帯でググってみる。
へぇ…こりゃあ、デートコースに最適じゃないか。
水族館なんて元カノとのデートですら行ったことがない。
ともだちにシェアしよう!