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デートに保護者(1)
しっかし…男4人で水族館とは。
自慢じゃないが、俺は元カノとのデートですら行ったことはない。小学校の遠足以来か。
オマケに俺と茂明は、完全にデートに付き添う保護者だ。
電車を降りて数分。
そんなことを気にする風でもなく、達也と弘毅は指先が触れそうなくらいに横に並び、時折楽しそうに笑いながら歩いて行く。
そんな光景を後方から眺めながら
「おい、茂明。」
「うん?なーんか俺達お邪魔虫だった?」
「あぁ。完全にそうだな。
デートのカモフラージュに利用された感満載。」
「なぁ、にーちゃん。ひょっとしてひょっとしてだけど…側から見たら俺達もカップルって思われてるんじゃない?」
「何だよ…気色悪いこと言うなよ。」
「俺だって嫌だよ。」
暫し沈黙――
「大兄ちゃん!小兄ちゃん!着いたよ!」
かわいい笑顔の弘毅に手招きされ、ため息を隠して追い付いた。
「へぇ…ビルの中なんだ。シャレオツ。」
「にーちゃん、それを言うなら『オッサレー』だよ。」
どっちも流行遅れか!?と思いつつ、茂明に突っ込まれながら、達也の奢りで入場する。
一応「後で精算してくれ」なーんて礼を言ってはいるが。
こうなったら、ぜーんぶ奢ってもらうぞ。
何たって俺の弘毅を掻っ攫ったんだからな。
これくらいどうってことないだろ?
「うわぁ…凄い。画像と一緒だ!達也さん、見て!」
「うん。エンターテインメント満載だな。」
「何かオトナの水族館って感じだよなぁ。
俺、今度彼女連れて来よーっと。」
くそッ、黙れリア充共。
……それにしても、立地もいい、中身もいい。
休日だからか家族連れで賑わっている。カップルも多い。何処かの団体ツアーなのか、同じバッジを付けた一個連隊が賑やかに通り過ぎる。
これだけ賑わうのは仕掛け人がイイトコ突いたんだな。
俺の仕事に何かヒントになるものがあるはず。
純粋に楽しむアイツらとは違う目線で歩いて行く。
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