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デートに保護者(2)

クラゲのエリアに進んできた。 色鮮やかな照明を浴びて、ゆらゆらと不規則に揺れるクラゲ達に目を奪われる。 幻想的…未来的? 癒しの空間に暫し佇む。心に打ち込まれた楔も抜け落ちそうだ。 ひそひそ声で、それでも高揚した様子で弘毅が達也に話し掛けるのが耳に入ってきた。 「達也さん、すっごく綺麗ですね! ずっと見てたいなぁ…」 「そうだな。デートコースに最適ってのも分かるよ。 もっと早くに連れて来てやればよかった…弘毅、気付かなくてすまなかった。」 「どうして達也さんが謝るんですか? 俺は今日来れて凄く嬉しい、です。」 はあっ…ここでもイチャイチャかよ。 抜け掛けた楔が再び打ち込まれる。 ひとり身の俺のことも考えてはくれないだろうか。 ふと見渡すと、意外と真剣な顔で水槽を見つめる茂明の姿があった。 「…おい、茂明。どうしたんだ?」 「いや、家でクラゲ飼えないかなーって思って。 かわいいよなぁ、癒されるじゃん! 小さいやつなら飼えるんじゃないかな。 にーちゃん、どう思う?」 またまた突拍子もないこと言いやがる。 「水槽やらポンプやら、色々と揃えなくちゃなんねーだろ?餌やりどうすんの?水も定期的に替えなきゃならねーんだぞ。 お前、昔お祭りの金魚すら育てられなかったよな。そんで俺と弘毅に押し付けてさ。」 「そうだったっけ?覚えてないなぁ…でもインテリア的にもいいよなぁ。」 「勝手なことしたら彼女に嫌われるぞ。」 沈黙―― え?まさかの図星? まさか似たようなことやっちまったことあるのか? いやいや、巻き込み事故はごめんだ。 「あっ、弘毅達が行っちまう! ほら、茂明、行くぞ!」 これ以上他人の恋路に首を突っ込みたくはない。 さっさと話題を切り替えて歩き出した。

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