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デートに保護者(4)

大きな袋を抱えた弘毅と茂明が並んで何やら話しながら前を歩く。 必然的に俺と達也が横並びになった。 「…なぁ、達也。お前いつも弘毅をあんな風に甘やかしてるのか?」 「いや、特別そういう訳ではないけれど。 あの笑顔を見てると、望むこと何でもしてやりたくなるんだよな。 そうかといって、あれしてほしい、これしてほしい、なんて自分から滅多におねだりすることはない。 普段は非常にしっかり者で謙虚できちんとしてる子だ。 今日は勝義達が一緒だから、末っ子の甘えたの弟に戻ってる感じだよな。 いつもと違う弘毅が見れて、嬉しい反面ちょっと嫉妬してる。」 「嫉妬?」 「あぁ。俺にもあんなに甘えてほしい。」 「…そうか…」 少し気持ちが浮上した。 達也が俺達に嫉妬してたなんて。 ふっ。ザマァ。 にーちゃん歴を甘く見るんじゃねーぞ。 「それにしても。弘毅はお前が絡むと、弟じゃない顔をするから吃驚するよ。 …やっぱりお前は特別なんだな。 悔しいけれど認めるよ。」 「勝義…」 「認めたくないけど認める。 大切な弟なんだ。 必ず、必ず幸せにしてやってくれ…頼む。」 「勿論だ!誓う。全てのものに誓う。 必ず、必ず幸せにするから、安心してくれ。 勝義、ありがとう…」 臆面もなく奴は言い切った。 俺は達也の肩を叩き、もう一度「頼むな。」と呟いた。 ちらりと視界に入ってきたのは、そっと目尻を拭い、鼻を啜る仕草。 そうか。コイツも思い詰めていたんだな。 俺と茂明と対峙して、どれだけ緊張していたんだろう。 悔しいけれど人間的にも凄くいい奴なのは伝わってくる。 弘毅が女だったら、諸手を挙げて迎え入れたんだが…残念だがそうではない。 2人が選んだ道だ。茨の道でも、2人で進んで行け! でも、サポートするのは茂明だけじゃないぜ。 あとは……両親か……難敵だな。

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