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デートに保護者(6)
「大兄ちゃん、何難しい顔してるの?
お蕎麦伸びちゃうよ。」
かわいい笑顔の弘毅が目の前に!
「えっ!?あっ、あぁ何でもないよ。
美味そうだな、もうできたのか?」
「にーちゃん、酒は無しにしておこうぜ。
今夜こそちゃんとホテルに帰んなきゃ。」
「分かってるよ!……くそっ。
もうあんな酔い方はしないからなっ。」
「小兄ちゃん、もういいじゃないか。
ほら、大兄ちゃん。ワサビは?ネギ好きでしょ?」
俺を弄る茂明と、グチグチと文句を言う俺を宥める弘毅。
それを気の毒そうに眺める達也の口の端が上がっている。
はあっ…絶対に馬鹿にしてるだろ?
カッコ悪いなぁ。
「勝義、今度は2人っきりでとことん飲もうぜ!」
えっ!?驚いて達也を見ると
「美味い酒、用意しておくから。」
「達也……サンキュ。」
何だよ…カッコ良過ぎじゃん。
はいはい、完全敗北。参りました。
イケメンは何やってもイケメン。今回のことで俺は悟ったぞ。
ふとソファーを見ると、色違いのイルカのぬいぐるみが仲良く寄り添っていた。
あぁ、今日達也に買ってもらったやつだな。
こいつらみたいに支え合っていくってことだろ?
お前らの覚悟はもう分かってるから、にーちゃんが全力でフォローしてやる。
まぁ、ちょっと頼りないかもしれんが、保護者的な立場だな。
任せとけよ。
「弘毅、ネギと大根おろし取ってくれ!」
「俺が取るよ。勝義、はい。」
「おぉ、サンキュー。」
最悪の出会いは和やかな食卓へと変化していた。
今夜もたらふく食べて、ホテルまでは達也の運転で送ってもらった。
「明日は俺達それぞれに適当に帰るから見送りはいいよ。世話になった。ありがとうな。
今後のことはまた皆んなで考えよう。
弘毅、身体に気を付けて元気でな。
達也、弘毅のことよろしく…頼む。」
「兄ちゃん、ありがとう。本当に見送りいいの?」
寂しそうな弘毅に、胸がキュッと痛む。
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