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デートに保護者(9)
「それからが大変だった。
『娘を誑かした変態だ』って、ご近所中に誹謗中傷のビラを巻いたり、勤務先に怪文書を送りつけたり、お姉さんが外出する時はストーカーみたいな知らない男に後をつけさせたり、家に石を投げ込んだり……それはまぁ、えげつないことをやり尽くしたんだ。
流石にみんな参っちゃって。
お姉さんは転職をそして実家も引っ越しを余儀なくされ、散々な目にあった。」
「何だそれ。酷っ。で?訴えたのか?」
「被害届を出すつもりだったんだ。それだけのことをされたんだから、当たり前だろ?
お姉さんの彼女は『ぜひ出してくれ、あんな人達は親でも子でもない』と言って泣いてたそうだよ。
それでもお母さんが『どんな親でもあなたの親でしょ。その分この子を幸せにしてやって。』って。
結局、引っ越し費用と慰謝料を支払ってもらい示談にしてさ。
とうとう絶縁って運びになったんだ。」
「それ、凄いな……修羅場じゃん。」
「だから、簡単に『絶縁』なんて言ってほしくないし、そうさせたくないんだ。
弘毅は…皆んなで祝福して達也の元に送り出してやりたい。」
「……うん、そうだな。
弘毅のあの笑顔を守ってやらなきゃ。
何とかしてお袋をこっちに呼び出さないと…」
「そうだ!弘毅が入院したことにしたら!?
お袋に身の回りの世話をしてほしいからって。」
「ダメだ。親父は無理矢理に有給を取ってついてくるぞ。
弘毅が心配だから車をかっ飛ばして来るに違いない。」
「えーっ…じゃあどうすれば…」
「そうだ!由美江おばさん!おばさんに一役買ってもらおう!
おばさんと姉妹2人旅だって言えば、親父はついては来ない。
親父はおばさんが苦手だからな。
2人の旅費や宿泊費は…うーん、俺が出そう!」
「おおっ!兄貴冴えてる!いいじゃん!
俺も費用を出すよ。」
ひっひっひ。我ながらいいアイデアだ。
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