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母親の勘(1)

その頃、若林家には……ご近所の仲良しのママ友、倉橋早苗が赤飯や紅白饅頭を持って訪問していた。 「ごめんね、突然。忙しいでしょうに。」 「いいのよ。丁度お昼にしようと思ってたの。お赤飯大好き!ありがとう。 ね、残り物のおかずでも良い?一緒に食べましょうよ。 それにしてもこれ、どうしたの? 誰かお祝い事のお裾分け?」 「うん、実はね…うちの貴弘なの。」 「えっ!?貴君!?いつ!?相手は誰!? やっだー、そんなお祝い事、うちに内緒にするなんて水臭いわねぇ。 早苗さんらしくない。やっだー。」 「うーん、ごめんね。内緒にするつもりはなかったんだけど、色々事情があって…」 「そうなんだ。お相手がバツイチとか?お子さんがいるとか?」 「……男の子なの。」 「え?」 「『同性婚』っていうの? うちの養子にして籍を入れたの。 だから大っぴらにできなくて…でもとっても良い子なのよ。息子がひとり増えたみたいで新鮮なの。」 「…『おめでとう』って言って良いのよね?」 「うん、そうね。ありがとう。」 「…吃驚した。そうだったの…改めて『おめでとうございます。』 でも、よく許したわね。」 「本当大変だったのよ。色々と。 ここに辿り着くまでにどれだけ親子喧嘩を繰り広げたか……私達の育て方が悪かったのか、って、主人とお互いに言い合いになって離婚騒動に発展したり、相手の家族とも揉めたり。 でも結局最終的に、あの子達の気持ちが変わらなかったから、それに負けちゃった、というのが正しいかもね。 腹を括って認めちゃったら案外スッキリしちゃって。 昨日お式を済ませたら、もう男だろうが女だろうがどっちでも良くなっちゃって。 思い立ってお知らせ方々一緒にお祝いしてもらおうと思って持ってきたの。」 「そう、大変だったのね。 で、どんな子なの?貴君が見染めたのは。」

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