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母親の勘(2)

「見た目はね、ジャニーズ系のかわいい顔してる普通のサラリーマンなのよ。。 身長はうちの貴弘より15センチ位低いのかな。 貴弘の会社の後輩で2才年下。 人懐っこくて、誰にでも好かれるタイプね。 キッカケは…貴弘らしいの。 あの子が一目惚れして『押して押して押して押しまくって落とした』って言ってた。」 「だって、貴君、彼女いたじゃない!」 「嫌々付き合ってたんだって。 ずっと、違和感があったって。彼女と結婚の話が出そうになって別れちゃったの。 だから……元々があったのね、きっと。」 「子供は?できるわけないけど…」 「それはね、ほら、うちはもうひとりいるから。」 「あぁ、光博君ね。」 「そう。貴弘と光博とで話つけてるらしいの。 『自分達は無理だからお前に頼む』って。 そういうことは兄弟で先に話を進めてるみたいなのよねぇ、親そっちのけで。」 「男兄弟ってそうなのかしら。うちも親なんて無視よ、無視。 特に弘毅!一体どうやって暮らしてるやら…」 「素敵な恋人でもいるのかもしれないわね。 そうなったら親なんて問題外よ。」 「はぁ…そのうち追求してやるわ。 さ、食べましょう! ね、今度結婚式の写真見せてよ。」 まさかあの貴君が…とまだ動揺する気持ちを抑えつつお皿に取り分け、早苗さんと話しながらいただいたお赤飯は、幸せな味がした。 弘毅…末っ子で家族皆んなで猫っかわいがりして、愛情たっぷりに育ててきた子。 どちらかといえば中性的な雰囲気で、女の子より男の子からモテていた。 『素敵な恋人でもいるのかもしれないわね』 早苗さんの言葉が何となく引っ掛かった。 まさかとは思うけれど、うちの弘毅の恋人が男性ってことはないでしょうね。 もしそうなら、私は早苗さんみたいに受け入れることができるかしら。

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