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母親の勘(3)
主人が帰ってきた。
「お?赤飯と紅白饅頭?
誰かお祝い事だったのか?」
「ええ。倉橋さんちの貴弘 君。
結婚したからって内祝いでいただいたのよ。」
「ええっ!?うちに何の連絡もなしにか?
冷たいなぁ。俺と英 とは幼馴染で、子供達も同い年で仲良くしてたのに。
水臭ぇ。何だよぉ…ひょっとして訳ありか?」
「あら、鋭いわね。あなたにしては上出来。」
「んん?何かあったのか?」
「ちょっと複雑なの。先にお風呂にしますか?
ご飯にしますか?」
「急いで風呂入ってくる。詳しく聞かせてくれ。」
瞬く間に、しっとりと湿り気を帯びたまま、タオルでガシガシと頭を拭きながら出てきた主人は
「で?何があったんだ?俺達にも内緒で結婚なんて、相当の訳ありだろ?
早く教えてくれよ。」
私はお茶碗にご飯をよそい、目の前に差し出しながら
「お相手はね、男の子。同性婚だって。」
「ん?」
「だからね、男同士で結婚したんだって。」
「……………………」
「お父さん?」
「今何て言った?」
「同性婚。男同士で結婚。」
「なぁーにぃーっ!?うっそだろぉ!?」
「ちょっと…五月蝿いわよ。ご近所迷惑。」
「…ごめん。マジ?本当に?」
「ええ。マジ。本当。」
そこで私は、昼間早苗さんから聞いた通りのことを話した。
主人は目を白黒させ、時折「うーっ」「ひえっ」とか唸りながら聞いていたが
「…取り敢えずご祝儀持って行かなきゃな。
明日準備しておいてくれる?一応“お祝い事”だもんな。
仕事終わってから一緒に行くか。」
「そういうと思ったから、もう準備してる。」
「おっ、流石だなぁ、うちの奥さんは。
明日定時で帰れるようにするよ。」
「ええ、分かった……ねぇ、もし、もしもよ、うちの子達がそうなったらどうする?
あなた受け入れることできる?」
恐る恐る聞いてみた。
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