160 / 280

母親の勘(4)

「ばっかやろう。そんなことできる訳ねぇじゃん! 相手ブン殴って社会的制裁食らわして、無理矢理別れさせるに決まってるじゃないか! ……おい、まさかうちの誰かが」 「もう落ち着いてよ。血の気の多いのは相変わらずなんだから。 今のご時世そんなこともありなのね、と思っただけよ。 ご飯、お代わりは?」 黙って差し出された茶碗を受け取りながら『まさかウチの子に限って』なんて言葉が頭をよぎった。 勝義は、この間彼女と別れたと聞いた。 真面目過ぎて遠距離恋愛も上手くいかず、苦戦しているらしい。 親の贔屓目、顔も悪くないし性格もいいと思う。 でも結婚願望はそれ程ないらしくて、きっと彼女の方がイラつくんだろう。 茂明には長年付き合ってる子がいる。 時々一緒に遊びに来るし、明るくて物怖じしない今時の子。 のんびり屋の茂明には、お尻を叩いてくれるようなあの子がピッタリなのかも。 弘毅は……大学入学と同時に家を出て行ってしまった。 就職も、親の意見も聞かずあちらでさっさと決めて、連休も盆正月も帰ってこない。 末っ子で女の子みたいにかわいくて、家族全員が全力でかわいがり過ぎて、嫌気がさしたのかもしれない。 たまに電話をしても素っ気ない。 彼女はいるのだろうか。 まさかと思うが、彼氏なんて……いや、まさかね。 何となく胸にじわりと湧いた疑惑。 私だったら受け入れるだろうか。 ……もう少し詳しく早苗さんに聞いてみよう。 “万が一”ということもあるし。 もしそうなったら…私はどうするんだろう。 「古い頭」「時代遅れ」なんて言われそうだけど、私達の若い頃とは違う価値観。 普通が普通じゃなくなる時代。 一応流行り物はチェックしてるし、簡単なダンスだって完コピできる。 家電の扱いだってお手の物だ。 精神年齢は25才だと自負している。 いつまでも気持ちは若い気分なんだけど。

ともだちにシェアしよう!