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母親の勘(4)
「ばっかやろう。そんなことできる訳ねぇじゃん!
相手ブン殴って社会的制裁食らわして、無理矢理別れさせるに決まってるじゃないか!
……おい、まさかうちの誰かが」
「もう落ち着いてよ。血の気の多いのは相変わらずなんだから。
今のご時世そんなこともありなのね、と思っただけよ。
ご飯、お代わりは?」
黙って差し出された茶碗を受け取りながら『まさかウチの子に限って』なんて言葉が頭をよぎった。
勝義は、この間彼女と別れたと聞いた。
真面目過ぎて遠距離恋愛も上手くいかず、苦戦しているらしい。
親の贔屓目、顔も悪くないし性格もいいと思う。
でも結婚願望はそれ程ないらしくて、きっと彼女の方がイラつくんだろう。
茂明には長年付き合ってる子がいる。
時々一緒に遊びに来るし、明るくて物怖じしない今時の子。
のんびり屋の茂明には、お尻を叩いてくれるようなあの子がピッタリなのかも。
弘毅は……大学入学と同時に家を出て行ってしまった。
就職も、親の意見も聞かずあちらでさっさと決めて、連休も盆正月も帰ってこない。
末っ子で女の子みたいにかわいくて、家族全員が全力でかわいがり過ぎて、嫌気がさしたのかもしれない。
たまに電話をしても素っ気ない。
彼女はいるのだろうか。
まさかと思うが、彼氏なんて……いや、まさかね。
何となく胸にじわりと湧いた疑惑。
私だったら受け入れるだろうか。
……もう少し詳しく早苗さんに聞いてみよう。
“万が一”ということもあるし。
もしそうなったら…私はどうするんだろう。
「古い頭」「時代遅れ」なんて言われそうだけど、私達の若い頃とは違う価値観。
普通が普通じゃなくなる時代。
一応流行り物はチェックしてるし、簡単なダンスだって完コピできる。
家電の扱いだってお手の物だ。
精神年齢は25才だと自負している。
いつまでも気持ちは若い気分なんだけど。
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