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母親の勘(5)
そうだ。
久し振りに弘毅に電話してみようかしら。
別に用事がなくってもいいわよね。
片付けを済ませ、弘毅に電話してみた。
聞こえるのは呼び出し音だけ。
何処か遊びにでも行ってるのかしら。
3回掛けたけど出なかった。
もう。
男の子って本当に愛想無い。
勝義はどうかな。
勝義も出ない。
全く…うちの子は親を何だと思ってるんだろう。
茂明は?
ふぅ…出ない。彼女とデートかしら。
仕方ない。『元気なの?』ってだけ送っておこう。
……3人とも未読。
まぁ、音沙汰ないのが元気な証拠だからいいか。
それにしても。
子供達はとっくの昔に親離れしちゃったのかな。
私にとっては幾つになっても幼い頃のあの子達なのに。
いい加減、子離れする時期なのかしら。
そうよねぇ……いつまで経っても、親がべったりなんて引かれるわよねぇ。
マザコンなんて言われたら立ち直れないわ。
女の子だったら、一緒に買い物に行ったりスイーツのお店で映える写メ撮ったりして、はしゃげたのに。
それはお嫁さんとできればいいわね。
嫁姑バトルなんて避けたいから、同居はしない。
適度な距離感があればいい。
“冷たい”と思われるかもしれないけれど、結局は他人なんだもの。
親子ならまだ許せるだろうけど、何か事が起きて、傷付いたり負わせたりなんてしたくない。
…祖母と母の関係を見てきたからなのか、その辺はドライな感覚を持ってしまった。
ありがたいことに主人は次男で、義母とは程良い距離を持って接することができている。
世話をしてもらっているお義姉さんには頭が上がらない。
だから折々に彼女には、別に私からお礼を渡すことにしている。
うちはどうなるんだろう。
3人が結婚して、そのお嫁さん達とそのご家族と仲良くやっていけるのかしら。
ぼんやりとしていた事柄が、現実味を帯びて目の前に迫ってくる気がした。
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