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母親の勘(7)
早苗さんは、ふふっと笑った後、暫く考えていたが
「……そうねぇ…後悔してない、って断言したら嘘になるわね。
今でもまだ何%かは迷ってるんだと思う。
だって、貴は“普通に”恋愛して“普通に”結婚するって信じて疑わなかったから。
私の育て方が悪かったのか、一体何が悪かったのか、って随分悩んだのよ。
でもね。
貴が今まで見せたことのない顔で
『許してもらえないなら親子の縁を切ってもらっても構わない。
俺は全身全霊を掛けてコイツを守ると決めたんだ。
父さん母さん、俺を生んで育ててくれて、本当にありがとうございました。
そのお陰で、俺は一生大切にしていく相手と巡り合えた。
感謝してます。』
なーんて言われてご覧なさいよ。
我が息子ながらいい男に育ってくれたな、って感動したの。馬鹿みたいでしょ、私。
孫を抱っこできないのは悲しい。
でも、“普通の”カップルでも恵まれない人達もいる。結婚しない選択の人だっている。
そう思ったら、貴がそこまで思う相手に巡り合ったのなら、許してもいいかな…って。
お父さんはね、もう殴りかからんばかりの勢いで、勘当する、親でも子でもない、出て行け、ってそれはそれは大変だった。
ところがナオ君…あ、素直のナオに人で直人っていうんだけど…
『僕は殴られても蹴られても構いません。
どんなに蔑まれてもいい。
どんな目にあっても構わない。
でも、貴と親子の縁を切るのだけは勘弁してくださいっ!』
って土下座するのよ。
結婚の許しを請うより、親子の縁を大事にしてほしいって言うナオ君に、お父さんの怒りがダウンしちゃって。
振り上げた拳の下ろしどころがなかったから、それに乗っかった感があったんだけど。
結局、2人の気持ちが変わらない本物だ、ってことで、渋々認めるに至ったのよ。
だからね、正直両手を上げて『結婚万歳』って訳ではないの。
あ、嬉しいのよ、嬉しいんだけど…複雑なの。」
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