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母親の勘(8)

「早苗さん、強いわね。 私だったら……もしうちの子の誰かがそうなったら……あなたみたいにちゃんと受け止めて認めてやれるかしら。自信がない。」 「大丈夫よ。母親だもん。 どれだけ文句言って悪態ついても、最後にはぜーんぶ受け止めちゃうのよ、きっと。」 「そうかしら。」 「ふふっ、そうよ。『母は強し』だもん。」 「ふふっ、そうね。そうだといいわ。」 「ねぇ、ご飯食べて行かない? 今から準備するんだけど、いつも2人で味気ないからよかったら一緒にどう?」 「え、本当!? うち今日自家製爆弾コロッケなの。持ってくるから待ってて。」 「あら、美味しそう!じゃあ豚汁でも作りましょうか。」 「あー、早苗さんちの具沢山で美味しいのよ。嬉しい! 行ってくるわね。」 旦那2人は何やらしんみりと話をしている。 そこだけ空気が淀んでいるようだ。 切り替えの早い早苗さんとは違う葛藤を吐き出してるのかもしれない。 英さんも相当思い切ったのだろう。 主人と幼馴染の英さんは性格もよく似てる。 少し話を振っただけで激昂する主人の昨日の様子からすると、英さんと早苗さんがどんな修羅場になったのか想像できる。 もし、もしうちの子がなったら……私は…主人は冷静でいられるだろうか。 そうなったら、即“センパイの早苗さん”に相談に乗ってもらおう! ん?どうして前提なんだろう。 やだわ。 胸の奥に小さな骨が刺さったような違和感が拭えないまま、コロッケをタッパーに詰め替えた。 こんな時の勘は妙に当たるのだ。 モヤモヤとした何かが迫ってきているような気がしてならない。 感化され過ぎたのかしら? 思い過ごしならいいんだけど。 ふと、弘毅の笑顔が浮かんだ。 まさか…まさか、ね。 「うちの子に限って」 そう声に出して大きく息を吐くと、タッパーを片手に倉橋家へと歩き出した。

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