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由美江おばさん(3)

駅からタクシーで向かった指定された日本料理店は、門構えから高級感漂う佇まいでちょっと気遅れがした。 「おい……こんな所初めてなんだけど。」 「俺もだよ。おばさん、張り込んだな…すっげぇ!」 予約してある旨を告げ案内される間、ちょっと緊張してきて胸がバクバクする。 「失礼いたします。お連れ様がお見えになりました。」 「はーい!あらぁ、ちょっと見ない間に一端(いっぱし)になっちゃって! 2人とも元気だった?さぁ、入って!」 「おばさん、ご無沙汰してます。 お忙しいのにわざわざ時間取っていただいてすみません。ありがとうございます! これ、俺達からの土産です。」 「昼飯までありがとうございます。 こんな所来たことない……」 「やっだぁ、なーに一丁前に挨拶してんのよ。アンタ達、いい男になったわねぇ。 おっ、献上品か。苦しゅうない。持って参れ。 あははっ!」 「おばさん、相変わらず豪胆だね。 …おじさんにも聞いてもらっても良かったんだけど、びっくりさせちゃうかなって遠慮した。」 「あのひとは大概のことは受け入れるわよ。 どうする?すぐ来るけど呼ぶ?」 俺達は顔を見合わせた。 アイコンタクト……(どうする?)(この際だ、聞いてもらおう)(了解) 「おじさんさえ良ければ。でも今仕事中でしょ?」 「アンタ達の返事次第ですぐ来れるようにしてあるの。呼ぶわよ。」 俺達は首振り人形みたいに頷いた。 その後、内線で呼ばれた中居さんがもう1人分のセットをし始め、おじさんが到着するまでの十数分間、俺達の仕事のことなんかを聞かれるまま話していた。 「お待たせ!おっ、勝義君に茂明君! 立派になったなぁ。」 「おじさん!ご無沙汰してます。 お忙しいのにお呼び立てして申し訳ありませんでした。」 「お忙しいのに突然にすみません。」 「あははっ、いいんだよ。 でも君達が改まってわざわざここまで来るって余程のことだよな。 まぁ、食べながら話そうや。」

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