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由美江おばさん(4)
「俺もお相伴できてラッキーだったよ。
ここは由美江の奢りだから遠慮しないで好きな物追加してしっかり食べなさい。」
「やったー!おばさん、ありがとう!ご馳走様!」
「こら茂明っ!すみません、遠慮なくて。
ご馳走様です。」
「いいのよ。遠路遥々と来たんだもの。
で?直球で聞くけど弘毅がどうかしたの?
加奈子に内緒で雁首揃えてうちに来るぐらいだから、余程のことなんでしょ?」
俺は大きく息を吐くと、箸を置いて居住まいを正した。
「実は… 偶々、先月俺が出張で久し振りに弘毅に会って……弘毅に結婚前提の恋人がいて同棲してることが分かったんだ。
その相手っていうのが……上司で部長職で……男なんだ。
俺1人では不安だったから茂明も呼び付けて、実際に俺達も会ったんだよ。
最初は絶対に別れさせる、大反対のつもりだったんだけど、本人に会ったら本当に弘毅のことを愛してていい奴で…弘毅も同じ気持ちで。
2人を見て話をよく聞いてるうちに、これはもう認めざるを得ないな、と。
あいつら本当に真剣なんだ。
俺達はいいんだけど、うちの親がさ。特に親父なんて相手に何するか分かんないから、2人に言う前におばさんに聞いてもらって協力してもらおうと思って。
親父より先にお袋が認めてくれれば、スムーズに話が運ぶと思うんだ。
勿論旅費やなんかは俺達が出すから、できればお袋と一緒に弘毅の相手に会ってほしいんだ。
おばさん、俺達は弘毅が幸せになることだけを考えてる。
弘毅の相手は、そいつしかいないんだ。」
俺は座布団から降りると
「世間的には道ならぬ関係だと思う。
でも、俺達は弘毅の望むようにしてやりたい。
俺達だけは弘毅のことを認めてやりたい。
だから、どうかお願いします!
力を貸して下さいっ!」
いつの間にか茂明も座布団を外し、頭を下げていた。
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