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由美江おばさん(8)

そんなこんなで盛り上がっていると 「ただいまー!」 おっ、ご主人様のお帰りだ。 「おじさん、お帰りなさい!さっきもありがとうございました!」 「先に風呂いただきました!今晩お世話になります!」 「はい、ただいま。ようこそ、ようこそ。 楽しそうだけど誰の噂話だい?」 「ははっ、千秋の。おめでとうございます!」 「うーん、嬉しいような悲しいような。 まぁ、後で聞いてくれよ。 おーい、由美江!俺も先に風呂にするよー!」 「はいはーい。ちょっと待っててー。」 バタバタと走って行くおばさん。 何だかいいな、こんな夫婦。 「なぁ、にーちゃん。ご祝儀立て続けにいりそうだね。 千秋と弘毅と。 にーちゃんはもう少し後にしてよ。俺、すっからかんになっちゃう。」 「あぁ。根性出して稼がないとな。 そう言うお前だって。俺より先に行くなよ。」 「あらあら、密談? みんなビールでいいわよね?」 「あ、俺達運びます!」 午後から目一杯身体を動かしたからか、あれだけ満腹だったのに、ちゃんとお腹も空いていた。 あれも食べろ、これも食べろ、と肉も野菜もどんどん焼いてくれ、その合間にビールを流し込んでいく。 急かされて写メった達也の写真をお披露目したところ、おばさんは 「きゃぁーっ、何、このイケメンはっ!? パパっ、このひとうちの親戚になるのよっ、いやぁーっ、萌えるぅ」 と悶えていた。 そうだよな、俺達から見ても立派なイケメンだよ。 「お返しに。」 と差し出された携帯の画面には、満面の笑みを浮かべた千秋と“熊”が写っていた。 ガタイのでかい格闘家か何かと間違えそうな男。 「熊だ…」 「確かに、熊……」 人懐っこい邪気のない笑顔。 その隣で笑う千秋は本当に幸せそうだ。 「千秋、良かったな。」 心からそう思えた。

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